広がる木造建築、オフィスビルやホテルにも 三菱地所のグループ会社が「非住宅」に注力
脱炭素社会への移行が求められるなか、大手ディベロッパー三菱地所の連結子会社・三菱地所ウッドビルドが、4~5階建て規模の木造建築の拡大に力を入れている。木造建築はこれまで戸建て住宅が中心だったが、近年、テナントビルや共同住宅、ホテルでも実績を積み重ねている。中島秀敏社長に木造化のメリットやビジョンを聞いた。 ◇中島秀敏(なかしま・ひでとし) 1991年に三菱地所に入社し、住宅事業を中心に担当。住宅を核とした複合開発(住宅、ゴルフ場、商業施設、研究所など)、都市の防災や住宅老朽化を改善する市街地再開発事業、2×4工法の住宅建設請負、リフォーム事業などに取り組む。2019年に三菱地所住宅加工センター(現・三菱地所ウッドビルド)の社長に就任し、以来、2×4工法の構造材調達、加工事業に従事する。 ◇三菱地所ウッドビルド 本社・千葉市美浜区。1983年、三菱地所ホーム向けの構造材販売を担う「三菱地所住宅加工センター」として設立され、現在は非住宅の木構造の施工や内外装の木質化なども担う。2024年7月に現社名に変更。従業員数は70人(2024年6月時点)。
法改正を追い風に拡大
――三菱地所ウッドビルドの事業内容を教えてください。 木造建築物の構造材を加工し、建築現場に配送するサービスを提供しています。本社のある千葉市と大阪府貝塚市に工場を持ち、戸建て住宅を中心に、2×4(ツーバイフォー)工法に特化して事業を展開してきました。 三菱地所グループは2016年から森林に着目し、木を柱や梁といった構造材に使う「木造化」や、内外装など見える部分にとりいれる「木質化」に取り組んできました。当グループの特徴は、木造建築のサプライチェーンの主要な機能をグループ内で押さえていることです。それにより、施主の意向を設計段階から把握し、建築物に反映できるのが強みだと考えています。 サプライチェーンの川下には設計を担う三菱地所設計や、木造建築の設計施工を担う三菱地所ホーム、ディベロッパーの三菱地所、三菱地所レジデンスなどがあります。一方、川上には2020年設立の総合林業事業会社MEC Industry(鹿児島県湧水町)があります。当社はグループで推進する木造木質化事業のサプライチェーンにおいて、ちょうど中間に位置しています。 ――脱炭素社会への移行が求められるなか、木造建築に注目が集まっています。 2010年に「公共建築物等木材利用促進法」が施行され、従来はRC(鉄筋コンクリート)や鉄骨でつくってきたような公共建築物を、国の政策として木造化していくことになりました。2021年には、法の対象が一般の建築物にまで広がり、木材の活用に追い風が吹いていると感じています。 国の統計によると、現在、1~3階建ての低層住宅の80%超が木造なのに対し、低層の非住宅では木造は15%程度にとどまっています。また、4階建て以上の建物は、住宅・非住宅ともに今のところほぼすべてが「非木造」です。 当社は非住宅分野が新たな収益源になると考え、木構造の施工請負機能を強化し態勢を整えてきました。受注した非住宅の延べ床面積をみると、2020年度の3000坪弱を起点に、翌年には1.8倍、2023年度には2.8倍まで伸びています。 2019年の建築基準法改正で木造建築の規制が緩和され、4階建てまでの建物が建てやすくなったため、当社が手がける建物も大型化しており、それが延べ床面積の数字にも表れています。もともと非住宅の事業は売り上げの5%ほどでしたが、今年度は2割を超えると見ています。