「何人でもいる」...ライシ大統領の死の影響がほぼゼロなのはなぜか
経済制裁とイスラエルとの「影の戦争」は続くが、中東と中ロへの接近政策は新大統領でも変わらない理由と「遺産」について
イブラヒム・ライシ大統領の死は、イラン・イスラム共和国史上、最も困難な時期の1つに起きた。 【画像】【動画】北朝鮮の「汚物風船」は糞便入り...衝撃の写真・映像にネット震撼 ライシはイラン政治指導層の中枢として、国内政策に大きな影響力を持っていた。中東地域内のライバル国との関係改善を目指すイランの最近の動きの中心人物でもあった。 その不在は国内の情勢に、そして近隣の国々との関係においてどのような意味を持つだろうか? ライシ政権は非常に保守的で、最高指導者アリ・ハメネイ師と密な関係にあった。両者の間には衝突や意見の相違はほとんどなく、過去の政権が最高指導者と一定の距離や緊張感を持っていたのとは対照的だ。 ライシはまた、最高指導者の座を35年間務めてきた85歳のハメネイの有力な後継者候補の1人とも見なされていた。保守層に広範な影響力を持ち、イラン指導部の未来を形作る上で重要な人物だったのだ。 しかしライシは国内外に課題を残しつつ、任期満了まであと1年というタイミングで死んでしまった。 そもそもイランは、その核開発計画に対してアメリカが科した厳しい制裁下にある。制裁は経済に大きいダメージを与え、人々の生活に深刻な影響を及ぼしている。 またライシ政権下では、2022年9月に「道徳警察」に逮捕された22歳のマフサ・アミニの死をきっかけに、女性の自由をめぐる同国史上最も大きな抗議運動の1つが繰り広げられた。 ほかにも国内のさまざまな地域で、主に経済危機や政府の国内政策をめぐるデモが起きている。 さらに、今年3月の議会選の投票率は過去最低だった。その結果として、ライシの死から50日以内に実施が義務付けられている大統領選は、公的な正統性に乏しい体制側にとって大きな挑戦となるだろう。 加えて、最近のイスラエルとの「影の戦争」の激化は深刻な安全保障上の懸念をもたらすとともに、多くの陰謀論も生み出している。 ライシの墜落死をめぐっても電子戦やドローン攻撃、さらにはイスラエルによる地上攻撃の結果であるとする噂が広まっている(国営イスラム共和国通信は、墜落の原因を「技術的故障」だったと報じている)。