シルクロードのブーム去った中国・敦煌、日本人観光客を熱望…邦人拘束など日中関係ネックに
世界遺産・莫高窟(ばっこうくつ)で知られる中国・敦煌市が、日本人観光客の訪問を熱望している。文化財保護での日中協力の歴史を生かし、コロナ禍を経てほぼ姿を消した日本人を再び引きつけたい考えだが、低調な日中関係がネックとなっている。(中国甘粛省敦煌 東慶一郎、写真も) 【80枚の写真で見る】雄大な自然と、様々な文化が息づくシルクロード
「天井と壁全体に色鮮やかな宗教画が残っています」
12日、莫高窟の第285窟。地元の「敦煌研究院」研究員が、視察に訪れた金杉憲治・駐中国大使に流暢(りゅうちょう)な日本語で説明した。第285窟は、莫高窟でも古い時期の西魏時代(6世紀)の壁画が残る。普段は非公開だが、壁画の保護、研究に日本の独立行政法人が協力したこともあり、特別に案内された。
シルクロードの要衝だった敦煌は、井上靖氏の小説「敦煌」や画家の平山郁夫氏の作品で有名だ。1980年代にはNHKのドキュメンタリー番組が一大ブームとなった。文化財保護で日中協力も進み、日本政府も約10億円の無償資金協力で支援した。
敦煌市によると、80、90年代は観光客のほとんどが日本人だった。ブームは去り、2000年代以降は徐々に減少した。コロナ後も回復していない。23年の日本人訪問は600人台で、90年代の1%程度にとどまるという。
市政府は、国際的な観光地として発展するため、日本からの観光客回復に期待を寄せる。金杉氏と会談した市トップの石琳・市共産党委員会書記は平山氏らの名前に触れつつ「日本との交流を大切にしている」と強調した。日本とのチャーター便の年内就航を計画していることも明かした。
莫高窟を研究する敦煌研究院トップの趙声良・党委書記も「歴史的に敦煌と日本には密接な関係がある。ぜひ日本の皆さんに来てほしい」と日本語で呼びかけた。
課題は多い。コロナ禍前に認められていた日本人への短期査証(ビザ)免除は再開されておらず、中国観光のハードルは高い。邦人拘束など日中間の懸案もある。金杉氏は地元政府との会談で、ビザ免除など環境整備への協力を求めた。