災害時の自治体広報のあるべき姿を考える 行政は3.11の教訓を得たのか
地震や火山などの大災害が自分の住む地域で起きたとき、あなたならどんな情報を必要とし、どこにそれを求めるだろう。家族や友人の安否は? 身の安全を確保できる場所は?食料など物資の調達方法は? 多くの人が頼る場所の1つが、居住する県や市町村のホームページ(HP)やツイッターなどのSNSではないだろうか。 大きな地震が起きるとなぜ「流言」が広がるのか? 危機時に求められるインターネット上の自治体の情報発信とはなにか。熊本地震の被災地の対応はどうだったのか。災害や自治体広報の専門家の話を通じて探った。
業務に追われた熊本自治体
熊本地震の前震として、震度7の揺れが熊本県益城町を直撃したのが4月14日午後9時26分。この直後から避難所情報や交通状況を更新し始めた御船町を除き、熊本県と益城町、隣接する多くの市町村のHPやSNSは更新されない時間が続いた。 県によると、HP上で最初に情報発信したのは翌15日午前6時35分。県の災害対策本部の第一回会議資料を掲載したときだった。担当者によると、ネット上での情報掲載について「後回しにしたという訳ではなく、職員らが問い合わせ対応を行う中でできる範囲での対応となった」という。 ほかの市町村でも、防災無線を使った情報提供などは一部で行われていたものの、「報道対応や情報収集、町内の内部調整に忙殺されサイト管理まで手が回らなかった」(熊本市)、「人命救助が最優先で情報をすべて発信することは難しかった」(嘉島町)などの声が聞かれ、ネット上でリアルタイムの情報発信を行うことが困難だった様子が垣間見られた。
情報発信は過去の教訓
災害情報学が専門の東京大学、総合防災情報研究センターの関谷直也特任准教授は「災害時には自治体が住民の生命財産を守る義務がある。物資がどうなっているか、避難所はどこになるのか、どう行動すればいいのかなど、伝えなければならない立場にある」と指摘する。
関谷准教授によると、東日本大震災が発生した際「(宮城県)気仙沼市はツイッターや携帯電話の緊急メールなどありとあらゆるものを使って津波の防災情報を伝えようとした。伝わるか伝わらないかはさておき、できるだけ色んな手段を使って発信しようと考え、それを実行した。岩手県庁もSNSを積極的に使っていた」と話す。一方で、熊本地震の被災自治体では発生直後の情報発信が不十分だったとみており、「3.11以降災害対策を積極的にやってこなかったと言われても仕方ない」と語った。 大規模災害時には停電などの影響で通信手段そのものが断たれることもある。しかし、関谷准教授によると、今回の震災では大手通信会社が基地局を増強していたり、予備電源を保持していたり対応策を講じていたほか、災害時に通信大手3社が公衆無線LANを無料開放する「00000JAPAN(ファイブゼロジャパン)」が機能したことで、前震後も情報の送受信は可能だったという。 「そのときに発信される情報がなかったというのは、通信会社は3.11(など過去)の教訓を生かして対応をとったのに、行政が対応を考えていなかったということの現われだ」と述べた。