災害時の自治体広報のあるべき姿を考える 行政は3.11の教訓を得たのか
タイムスタンプ導入を
被災地の状況は時々刻々と変わる。不足する物資にしても、数日前とは異なることがある。ソーシャルメディアなどを通じて無数の個人が情報を発信・拡散させる中で、河井教授は行政側が「しっかりした形でソースとなる情報をどんどん提供していくことが重要」と主張。特に「いつの情報か」を明示するタイムスタンプを導入すべきだという。 「パンはあるのにパンが届く。実は3日前の情報だった。ということを防ぐためにもタイムスタンプは重要視すべき。また自治体側が、HP上で発信した情報を時系列で見られるようにして『ここからツイートして』というやり方もある」と話した。
「パーソナルな情報」が必要
災害に遭ったとき、人はどのような情報を必要とするのか。河井教授は、年齢や子どもの有無、持病など、住民一人ひとりの個人的な状況に応じた「パーソナルな情報」を届ける必要性を訴えている。 「最終的に住民が知りたいのは『私と私の子どもは大丈夫なのか』ということ。自分の家が倒れていなければいいので、『地域で何軒が倒れた』というのはほとんど意味がない。同様に、『自分の帰り道が大丈夫か』が重要であり、『道路5箇所寸断』と言われても意味がない。メディアが提供するような一般的な情報は、外から『大変だな』『募金しなきゃ』と思える情報にはなるが、中にいる人間のニーズとはずれている」 河井教授が提案するのは、事前に住民が行政側に家族構成や持病などの状況を伝えることで、緊急時にはその人にあった情報提供を受けられるようにする仕組みづくりだ。「災害時に、明日『透析のはずだった』という人もいるはず。透析はできるのか。受け入れてくれるクリニックはあるのか、という極めてパーソナルなことを教えてくれることが必要。この情報とこの情報を預けるので、何かあったときにはこれを使って情報を提供してください、ということが必要だと思う」と話した。