災害時の自治体広報のあるべき姿を考える 行政は3.11の教訓を得たのか
住民は「自治体の動き」に関心
災害時、住民が最も知りたい情報の1つは「(居住する)県や市町村が今、何をやっているか」であり、さまざまな情報が錯綜するなかで行政側が正しい情報を発信しなければ「(行政が事実を)隠している」などの陰謀論も出かねない、と関谷准教授は話す。 米国には、災害発生時に住民らが噂を含めた情報の真偽を確認するための「ルーマー(噂)コントロールセンター」と呼ばれるコールセンターが設置されることもあるという。 「『まだ把握していない』『これから確認する予定』という情報だって、自分たちがやっている、というメッセージにはなる。行政は『未確認』とか『やっている最中』という発信が苦手だが、災害時にはそれをやっていかないと住民が不安になる」と話した。
「ゆるキャラ」の位置付け大事
5年前の東日本大震災時、停電などで多くの自治体HPが閲覧不能となる中、フェイスブックやツイッターなどソーシャルメディアによる情報発信が注目を集めた。その後、多くの自治体で災害時専用のソーシャルメディアが設けられたが、自治体広報が専門の河井孝仁東海大学教授は、「災害のために作ってしまうと、災害がない限り見られなくなってしまう」とその実用性を懐疑的にみる。
熊本県は全国有数の認知度を誇るゆるキャラ「くまモン」を抱える。公式ツイッターのフォロワー数は4月14日の前震発生時で約44万人おり、その後もさらに増え続けている。河井教授は「日常的に親しまれているくまモンが『この状況でゆるいことは言っていられません、ごめんなさい』と言ってしゃべりだすことができればすごく意味があった」と主張。「(くまモンを)単純に面白おかしい存在ではなく、実は人の命を救う存在だと伝えていたかどうかが問題で、その情報がないままだと、『あの面白いくまモンが出てきちゃったらおかしいよ』という話になってしまう」と述べ、自治体側が今後ゆるキャラをどのような位置付けとしていくかが重要だと語った。