山の斜面が丸刈りに「迷惑施設化」する再エネ施設 脱炭素で原発回帰にかじ、福島から懸念の声
太陽光発電巡るトラブル、180件
広い範囲に放射性物質が飛散した世界最悪レベルの東京電力福島第1原発事故から13年7カ月。この間、再生エネの固定価格買い取り制度が始まり、太陽光を中心に全国で再生エネの導入が進んだ。発電電力量に占める再生エネの割合は22年度が21・7%と、事故後の11年度(10・4%)と比べて約2倍になった。 気候変動対策で政府が掲げる目標「50年カーボンニュートラル(温室効果ガス実質排出ゼロ)」の実現に向けて、再生エネのさらなる導入拡大は欠かせない。だが、地方自治研究機構によると、防災や環境保全などを目的に太陽光発電設備などの設置を規制する条例は全国で290ある(今年6月時点)。NPO法人環境エネルギー政策研究所の調べでは、太陽光発電事業者と地元とのトラブルは、新聞で報道されたケースだけで今年2月までに180件あったという。 同研究所の山下紀明主任研究員は「トラブルが多い現状では、規制条例ができるのはやむを得ない面はあるが、脱炭素を目指すのであれば安易に抑制に流れ過ぎないようにすることが重要だ」と話し、地元に経済的なメリットをもたらす仕組みなど、地域との共生を後押しする施策の必要性を指摘する。
温暖化対策左右する「エネ基」の議論
日本は昨年、今年と2年連続で統計開始以降「最も暑い夏」となった。東京大などの研究チームは、いずれの年の暑さも地球温暖化がなければ起こり得なかったと分析している。気候変動対策の強化は一刻の猶予も許されない。 資源量が豊富で安価な石炭を主力電源としてきた日本。国内では今、エネルギー政策の中長期の方向性を示す「エネルギー基本計画(エネ基)」の改定作業が大詰めを迎えている。3年をめどに見直すこのエネ基次第で、国内の温室効果ガス排出削減のスピード感が決まると言っても過言ではない。 日本も岸田文雄前政権下で「GX(グリーントランスフォーメーション)」を推進する方針を打ち出している。GXとは、化石燃料中心から、再生エネや原発など発電時にCO2を排出しないエネルギー中心に転換することを指し、10年間で官民合わせて150兆円超を投じる目標を掲げた。 日本は現状で発電量の7割を石炭やガスによる火力発電に頼り、化石燃料のほとんどを輸入している。GXには先進諸国の中でエネルギー自給率が最低水準にある現状を変える狙いもあり、石破茂首相もGXの取り組みを加速させる考えを表明している。