山の斜面が丸刈りに「迷惑施設化」する再エネ施設 脱炭素で原発回帰にかじ、福島から懸念の声
世界が批判する日本の石炭依存
現行のエネ基は、気候変動対策の観点から見れば、決して野心的と言える内容ではない。30年度時点で総発電量の19%を石炭で賄う計画で、石炭依存の姿勢は国際社会からたびたび批判されてきた。 岸田氏は21年の首相就任後、初の国際舞台となった英グラスゴーでの国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)で、「ゼロエミッション(ゼロエミ)火力」を推進し、アジア全体への技術支援も進めると宣言。ゼロエミとは、火力発電の燃料をアンモニアや水素などに置き換え、CO2を排出せずに発電することを指す。 ただし、アンモニアだけを燃料とする技術はもちろん、化石燃料にアンモニアを混ぜて燃やす技術さえ商用化されていない。NGOなどからはCO2排出量の多い石炭火力の「延命策」との声が上がる。
「我がこと」として考える気持ち失われた
岸田前政権はまた、脱炭素実現を理由に、原発回帰にかじを切った。 福島市内に住む岡地さんは11年の原発事故直後の夏を振り返りながら語る。「決して涼しい夏ではなかったけれども、節電に取り組むなど、みんながエネルギー問題を『我がこと』として考えていた。でも今の日本からは、そういう当時のみんなの気持ちが失われているような気がする。事故からたかだか10年あまりで、なし崩し的に原発新増設の議論が出てきたこともショックだ。『喉元過ぎれば熱さを忘れる』という言葉通りの状況だ」
迫られる「大幅削減」の新目標
エネ基と並ぶ難しい「宿題」がある。35年以降を期限とする新しい温室効果ガス排出削減目標の策定だ。 各国は25年2月までに新目標を国連に提出することが求められている。国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は「世界の平均気温を産業革命前から1・5度上昇に抑える」という世界共通目標実現には、世界全体で35年までに19年比で60%減らす必要があるとしている。国別でも先進国は同程度かそれ以上の削減が期待され、日本も現行目標の「30年度までに13年度比46%減」からの大幅上積みが求められる。