虐待を未然に防ぐため…“元福祉士の弁護士”が精神科病院を相手に「前例のない法的措置」 “不当な長期隔離入院”の患者に「司法の救済」を与える方法とは
隔離室の運用も「違法状態」
また、相原弁護士は、A病院の隔離室に4年間収容されていた別の患者・乙さんのカルテを示し、A病院での隔離室の運用に問題があったと訴えた。 相原弁護士:「隔離室は狭く独房のような場所だ。ベッドが1つと便器があるだけで、監視カメラによって監視されている。入っていること自体がストレスになり、決して人を、しかも精神疾患の患者を長期間収容すべき場所ではない。 本来、隔離が認められるのは、自傷・他害のおそれがあり他の方法ではどうしようもない場合に限られるはずだ。 ところが、開示されたカルテを見ると『おちついている』『やすめた』等ばかりだった(【画像】参照)。これで4年も隔離室に入れられてしまっていた。明らかに違法だ」 また、乙さんに関しては、病院の『応召義務違反』の問題もあるという。応召義務とは、患者から治療を求められた場合に、正当な理由なく拒否してはならないという義務である。 相原弁護士:「患者は退院後も、しばらくは同じ病院に通院して治療、経過観察を受ける必要がある。 ところが、A病院は、退院後の通院を希望しても『迷惑なので受けたくない』と拒否している。もちろん、医師の応召義務はある程度緩やかに解されており例外もある。しかし、4年も隔離入院させた人を断るのは、明らかに違法ではないか」
事実上、機能していない「精神医療審査会の審査」
入院患者の処遇改善については、都道府県の「精神医療審査会」に処遇改善請求を行い、審査してもらう手段がある。しかし、相原弁護士は、この手続きが事実上、十分に機能していない実態があると指摘する。 相原弁護士:「特に退院請求の認容率は、年にもよるが2~3%にとどまる。しかも、審査している形跡が見受けられない。カルテを読んでいなかったり、話を聞かずに帰ったり、機能しているとは到底考えられない。 また、精神医療審査会の審査には2~3か月かかる。これでは時間がかかりすぎる。 病院は、患者に弁護士がついて処遇改善請求を行っても、まったく怖くない。むしろ、『ここまで弁護士にやってもらってダメだったんだから』などと、患者に退院をあきらめさせるよう説得するための材料にさえされてしまっているのが現状だ」