コロコロ攻撃の東邦が好発進 元営業マン監督の観察眼 センバツ
◇センバツ第2日(19日)1回戦 ○東邦(愛知)6―3鳥取城北● 力強く、空気を切り裂く打球は野球の魅力だが、コロリコロリと転がって甲子園の土に跡を残すバントも味わい深い。12安打と打ち勝った印象のある東邦だが、その結果を導いたのは、四回に4度も成功させたバント攻撃だった。 【似てる?プロで活躍の東邦ナインの兄や父】 1点リードの四回無死一塁。5番・岡本昇磨は一塁線側にバントした。相手はラインを切れると判断して見送ったが、白球はストップ。内野安打で無死一、二塁となった。 6番・上田耕晟へのサインは送りバント。前の打席でバントをミスしていたが、今度は三塁方向にきっちりと転がし、自らもセーフとなった。 無死満塁。舞台が整い、7番・南出玲丘人は「気持ちが楽になった」。直球をとらえて右前適時打を放ち、相手のミスも絡んで2得点。さらに無死一、二塁から送りバント、スクイズと連続で成功し、1点を加えた。 東邦の山田祐輔監督は2016年に母校に指導者として戻る前、大手のマンション販売会社に勤め、営業に携わった時期がある。その時期に培われたのが鋭い観察眼だ。「どこかに隙(すき)がないかなというのを見ながら、(相手の)心理を考えながら攻めることを意識はしている」。バント処理に隙を見せた相手に畳みかけた。 「単純に打てないから」と、練習でもバントにこだわってきた。定期的に1時間程度のバント強化メニューを練習に取り入れる。守備役に猛チャージをさせる上、ミスするとグラウンド1周というルール。岡本も「グラウンドを何周もしました」と笑うが、その成果でチーム全体のバント精度が上がった。 緊張するのも当然の甲子園初戦。山田監督は二回に先取点を挙げたとはいえ、選手たちの硬さを感じとっていた。だが、四回のバントの連続成功で「いつもの感じを思い出せたのかな」。その後も要所で加点した。 山田監督にとって甲子園初采配で初白星。岡本が「監督に初勝利をプレゼントしたかった」と言えば、山田監督も「(初勝利は)気持ちいいですね」と破顔した。持ち味を出してのメモリアル勝利。センバツ歴代最多優勝5回を誇る名門が最高のスタートを切った。【岸本悠】