『虎に翼』寅子が母・はるとの別れで子供のように泣きじゃくった「大事な理由」
---------- 『虎に翼』振り返り日記:第12週「家に女房なきは火のない炉のごとし?」 X(旧Twitter)に日々投稿する『虎に翼』に対する感想がドラマ好きのあいだで人気のライター・福田フクスケさん(@f_fukusuke)。連載「『虎に翼』振り返り日記」では、福田さんが毎週末にその週の感想を振り返って伝える。見逃してしまった人も、あのシーンが気になると思った人も、友達と自分の感想をすり合わせる気持ちでお楽しみください。 ---------- 【写真】母・はるが寅子の「最大の敵」から「最大の味方」になった感動の瞬間… ついに始動した東京家庭裁判所。佐田寅子(伊藤沙莉)がまず最初に取り組んだのは、町にあふれる戦災孤児たちの視察だった。 上野の孤児たちのリーダー格である問題児・道男(和田庵)との出会い、そして彼らを世話する山田よね(土居志央梨)との再会を通して、弱者を支援することの難しさに直面する寅子。 そんな中、道男に他の家族と分け隔てなく接する母・猪爪はる(石田ゆり子)の姿を通して、寅子が家裁判事として必要な「愛」に気づくことになる第12週を振り返ってみたい。
6月17日(月)第56回:寅子とよねの「裏切り」のすれ違い
多岐川幸四郎(滝藤賢一)は、家庭裁判所の基本理念である5大基本性格(独立的性格・民主的性格・科学的性格・教育的性格・社会的性格)を発表する。式典で多岐川が一つ一つ説明している場面はナレーション処理されてしまっているが、これからの展開を読み解く上で重要な理念になりそうだ。 東京家庭裁判所の判事補となり、念願の裁判官となった寅子がまず取り組むことになったのは戦災孤児の問題。戦後社会の混乱や政治の不備が原因なのに、町にあぶれ非行に走る子どもたちが「浮浪児」「根絶」と社会の迷惑であるかのように扱われるのは、明らかに現代のトー横キッズや立ちんぼなどの問題も視野に入れているのだと思う。 視察のために訪れた上野で、スリを働くタカシ(令旺)と道男を追って「轟法律事務所」へと辿り着く寅子。そこで再会したよねの驚きと安堵を表に出すまいとする表情、寅子が判事補になったと聞いたときの喜びと感慨を押し殺す表情が絶妙だ。 寅子は、妊娠を理由に弁護士を続けられなくなって逃げた(と思っている)ことをもって「裏切った」と思っている。でもよねは、「お前は一人じゃない」と言ったにもかかわらず、寅子が一人で抱え込んで辞めたことを「裏切られた」と思って悲しんでいる。そのすれ違いが、もどかしい。 そして、寅子と決別したときのよねが、実は涙を流していたと明かす回想カットをここで挿入してくるとは……(最初の放送時にはなかったはず)。 轟太一(戸塚純貴)と稲垣雄二(松川尚瑠輝)がシンプルに再会を喜び合えるのに対して、寅子と崔香淑(ハ・ヨンス)、よねとの再会には笑顔がない。その対比が、女性の複雑な分断や、周縁化/透明化されてきた人たちの置かれた状況を象徴していて、見ていてつらくなる場面だった。