「ママはご飯を作ってればいいから」 母親をなめる息子…どうコミュニケーションすれば?
子どもの成長は、親の自己実現ではない
コロンビア大学教育大学院で「ポジティブサイコロジー」(人のプラスの感情を科学的に研究する学問)の授業を取ったとき、こんな内容を聞きました。心身ともに満たされている幸せな状態のウェルビーイングには「ヘドニック(hedonic)」と「ユーダイモニック(eudaemonic)」の2種類がある。「ヘドニック」は例えるなら、お金がたくさんあって仕事をする必要もなく、ハワイのビーチで寝っ転がって海外ドラマを見ているような状態。つまり、ポジティブ感情が多く、ネガティブな感情が少ない状態です。 一方、後者は、自分の能力を発揮して何かをやり遂げたときに感じるもの。自分の成長を感じたり、達成感を得たりしたときの「幸福感」です。私は日本の女性には、後者の「ユーダイモニック的な幸せ」が欠けていると思います。 特に専業主婦だと、日本の女性は家族に奉仕する家政婦と化してしまっていることが少なくありません。外で働く夫と話が合わなくなったり、会話が減ったりということもよく聞きます。この質問者さんの息子さんの言葉が、なにかそういったことを思わせる雰囲気を持っていると感じました。「相談したところで、お母さんに社会の何がわかるの」などと思われていたら、こんなに不本意なことはありません。家族のために尽くしているのに、そんな言われようは、たまったもんじゃないですよね。そうならないように、お母さんにも「ユーダイモニック的な幸せ」を追求してほしいのです。 まず、何でもいいからお母さんがワクワクすることや興味のあることをノートに書き出してください。「私の人生って何? やりたいことは?」と、いったん立ち止まって考えてみてほしい。子どもの成長はお母さん自身の自己実現ではないし、そう思っている限りは、お母さんのモヤモヤは埋められません。お母さんが自覚を持てば、息子さんとの対話のあり方も、彼の言葉も変わってくるはずです。 コミュニケーションの面はこうしたことで改善できると思いますが、「親としてサポートすべきこと」について答えるなら、「余計なことをしないというサポート」を提案したいですね。手出ししないのは一番難しいことだと思いますが、子どもと自分を同一視して一体化してしまったら、親も子も双方が苦しくなる。息子さんはしっかりしているので、何か困ったら向こうから言ってくるでしょう。 この先も彼が自分自身で自分の人生を歩いていける人に育つよう、お母さんには「信じて見守る」という勇気を持ってほしいと思います。そして、お母さんはお母さん自身の人生を、ぜひ謳歌してほしいと思います。