引退したばかりの鎌倉時代生まれの獅子・狛犬たちも上京 上野で春日大社詣
春日大社は奈良時代の初めに国家の平安と国民の繁栄を祈願するために創建された。武甕槌命(タケミカヅチノミコト)が常陸の国(現在の茨城県)から鹿に乗り、この地に降臨したと言い伝えられている。 春日大社は2016年に60回目となる「式年造替(しきねんぞうたい)」と呼ばれる社殿の建て替えや修繕を行ったばかり。この大きな節目に社外ではめったに拝観できない貴重な古神宝を東京国立博物館の「春日大社 千年の至宝」で観ることができる。 13世紀、鎌倉時代から昨年11月まで現役を務めてきた、獅子・狛犬(こまいぬ)、合計8体も式年造替を機に退役し、同館にやってきた。木製で700年以上もの間、屋外で風雨にさらされていたにも関わらず、保存状態がとてもいい。もともとは勇ましく社殿を守ってきた神獣たちも、退役したせいか、今ではどことなくホッとしたような愛らしい表情に見えてくる。
神様は鹿に乗ってやってきた
同展は「神鹿の杜」「平安の正倉院」「春日信仰をめぐる美的世界」「奉納された武具」「神々に捧げる芸能」、「春日大社の式年造替」からなる。 「神鹿の杜」では春日大社と鹿の切っても切れない関係性を紹介している。神様が春日の地に降臨された様子を描いた「鹿島立神影絵」や「鹿図屏風」などの絵画をはじめ、神様がお乗りになる鹿に載せる鞍など 鹿が描かれた作品には「鹿マーク」がついている。分かりにくい“隠れ鹿”を探すのも楽しいかもしれない。 「春日信仰をめぐる美的世界」では、春日信仰の広まりで春日の地へ赴かずとも、数がの神々を礼拝できる「春日曼荼羅(まんだら)」を紹介する。
国宝の源義経が使用していた小手
また「刀剣や甲冑がなぜお宝なのか?」と思われるかもしれない。同館の土屋貴裕研究員によると、「刀剣や甲冑は武家が実際に使っていたもので、いわば商売道具。その大切なものを奉納することで信仰心の深さを示していたことをが考えられます」と説明。 源義経(みなもとのよしつね)が使用していた小手もある。小手単体が国宝に認定されることは非常に珍しいケースだという。