【中学受験のカリスマ家庭教師が教える】漫然と解くのはNG!本番で点数を取るための「過去問」の解き方
小学6年生にとってはいよいよ入試に向けての仕上げの時期にはいってきました。どのようにして最終的な志望校を確定するのか、過去問はどのように進めればよいのか? 塾がお膳立てしてくれる最難関校はともかく、それ以外の学校を志望している子の親御さんは意外に情報がないといいます。子どもを本当に伸ばしてくれる志望校の見極め方や選び方、その志望校に合格するための効果的な「過去問対策」をやり方を、大人気プロ家庭教師の安浪京子先生が詳細に説明した『中学受験 大逆転の志望校選びと過去問対策 令和最新版』から抜粋して、そのノウハウの一部をご紹介します。 ● 過去問を解く前に必ずやる3つのこと 過去問は漫然と解いてはいけません。 過去問を解く前にすることは、具体的には次の3つです。 ①目標点数を決める ②時間配分を決める ③〇×△に分類する(問題の選別) それぞれ、説明していきましょう。 ● ①目標点数を決める まず、目標点数を決めます。 赤本には、過去の「合格者平均点」「受験者平均点」「合格最低点」などが掲載されており、ホームページで公開している学校もあります。 これらの数値の中で一番大切なのは「合格最低点」です。なぜならこの点数さえクリアできれば、合格を勝ち取ることができるからです。 本書では、「芝」の2024年度入試の各点数と、5年間の合格最低点を紹介していますが、これまでの合格最低点で一番高いのが、2022年の210点。つまり210点あれば、どの年においても合格することができるというわけです。 合格最低点は直近5年くらいを見ます。過去問は満点を取る必要はなく、目標点数を立ててそこに近づければいいのです。この学校が第二志望、第三志望で余裕がありそうな時には、目標点を少し高めに設定します。 まだ過去問を解き始めたばかりで余裕がない、第一志望でかなり背伸び的な学校である、という場合は、合格最低点ぎりぎりの点数でもいいでしょう。 また、例えば「獨協(東京都)」や「三輪田(東京都)」のように近年、偏差値の上昇が著しい学校の場合は、志望順位が低くても合格最低点に30点ほどプラスして考えます。 次に、それぞれの科目で何点取れそうかをざっくりと計算します。例えば算数が得意であるなら、算数を仮に85点、75点などと決めてから、他の科目の点数をあてていきます。そして、その点数を目指して、過去問を解くようにします。 ● ②時間配分を決める 次に時間配分を決める練習をします。 「慶應義塾中等部」の2024年度の算数を例にしてみましょう。大問が全13題、計20問あります。解答時間は45分です。 お子さんがスピードにのってどんどん問題を解いていく「処理型」の場合は、見直しの時間を10分とり、35分の時間制限で計算します。 反対にじっくり問題に取り組む「熟考型」の場合は、45分の時間をすべて解答にあてていきます。 「熟考型」よりさらに時間がかかってしまう子は、例えば大問の最後など、難しい問題を抜いて計算してもいいでしょう。 処理型:35÷20=1分45秒 熟考型:45÷20=2分15秒 問題を抜く:45÷17=2分40秒 これで、1問あたりにかけていい時間がわかります。実際は、そこまで時間のかからない問題もあり、 そこで浮いた時間を他の難しい問題に使うことができるため、「後半の問題は3分くらいかけても大丈夫だよ」と安心させることも大切です。 ちなみに、慶應中等部は、大問3の(4)に必ず回転体が出題されますが、時々レベルの上がる年があります。 教え子のRくんにこの問題を解かせたところ、15分かけて間違える、という年がありました。 前述の1問あたりの時間を再確認したうえ、「当日、この問題を解く?」と聞いたら、「かなり簡単、もしくは時間がたくさんあまった時以外は飛ばす」との答えが返ってきました。 もちろん、直前期以外は、このような問題を丁寧に解き、正解させる努力が大切です。 しかし、本番では「点数を取ること」がすべてであり、これこそが合格するための時間配分テクニックです。 過去問を始める頃には、本番で使う腕時計を準備しておきましょう。残り時間を視覚的にとらえるためにも、デジタルではなく秒針のあるアナログの時計を使うようにしてください。 ● ③〇×△に分類する(問題の選別) 過去問をスタートしたら、最初の30秒以内で、問題を○×△の順に分類します。 〇は解けるもの、×は難しいと判断したもの(捨て問)、△は解いてみないとわからないものです。 ○の問題からスタートし、次に△へと移ります。「×には手を出すな、まずは△を攻略しろ」ということです。 何度も言いますが、合格するために満点を取る必要はありません。むしろ、難しい問題を避け、自分の実力で得点できる問題に時間をかけて確実に点数を積み上げていくことが必要です。そのためには、問題をぱっと見た時に、「解けるか、解けないか」おおよその見当をつけておく必要があります。 過去問演習は、この「捨て問」を見極めるための訓練でもあるのです。 ただし、○と△で目標点に達しない場合はまだ過去問を解く段階ではありません。 算数は、前半の大問1の計算や、大問2の小問群(一行題)で点を稼ぎますが、時々、地雷のように難しい問題が仕掛けてある場合があります。このような場合、前半部分に時間をとられていると、確実に解答できる後半の問題にたどりつかないことがあります。過去問を解く時に問題にざっと目を通して「解けるか、解けないか」を判断し、解けるところから始める。本番は普段の延長でしかないため、本番と同じやり方で過去問を解くことが大切なのです。 そのためには、普段の模試でも、○×△をつける練習をしておくことも必要です(復習テストはのぞく)。ちなみに、記すのは○と×のみで△は無印にすると、時間短縮できます。 *本記事は、『中学受験 大逆転の志望校選びと過去問対策 令和最新版』(安浪京子著・ダイヤモンド社刊)から抜粋・編集して作成したものです。
安浪京子