中国の老人に超人的な体力が宿る本当の理由…筋骨隆々の体を自慢し合い健康増進【中国人「老後問題」の壮絶!#1】
【中国が抱える老後問題の壮絶】#1 多発する無差別殺人に「末法の世」を思わせる中国だが、高齢者の世界でも悲劇が繰り返されている。高齢化社会という日本と同じ課題を抱える中国の老人事情をのぞいた。 【写真】中国発「ネギラテ」に世界が注目! 「月曜から夜ふかし」(日本テレビ系)の中国特集が日本の視聴者をギョッとさせている。番組には超人的な中国人高齢者が続々と登場するのだ。老人天国さながらの公園では、筋骨隆々の老人たちが鍛え上げた体を自慢しながら健康増進に取り組んでいる。ラジオ体操すら衰退し、人影もまばらな日本の公園とはまるで風景が違う。 ■医療制度に決定的欠陥 なぜ、中国の老人たちはこれほどまでに熱心なのか。上海在住の李さん(仮名、70代)は「中国ではがんになったら家が潰れると言われているからです」と明かす。李さんがほのめかすのは、中国の医療制度の問題だ。 数年前、李さんの夫はパーキンソン病という筋肉が動かなくなる難病で他界した。末期の闘病生活をこう振り返る。 「看護師の仕事は注射と薬の配布程度で、身の回りのことは介護士が対応します。けれどもうちには介護士を雇うお金はありませんでした」 中国にも医療保険制度はあるにはあるが、難病になるほど自己負担が増える。また完全看護ではないから、家族の負担も重い。うっかり入院ともなれば、高額な薬や治療器具を買わされ、手術時には医師に分厚い袖の下を渡し……と、コツコツと貯めてきたお金は瞬時に蒸発する。 李さんは入院生活についてこうも話す。 「今の中国の医療保険制度では長期入院もできません。夫は数週間で退院させられ、再入院するには非常に複雑な手続きを要しました。長期入院でき、無料の治療を受けられる上級幹部の扱いとはまるで違います」 上級幹部とは省レベル以上の役人や退役軍人などを指す。すべての人に平等に提供されるはずの医療だが、中国には特殊な階級の人々のための特別な待遇があるようだ。中国で公務員をしていた朱さん(仮名、40代)も言う。 「中国の医療費が高いのは、政府要人の医療費が無料だから。彼らは“紅い医療保険証”というのを持っていて、これを見せれば医療費はタダになる。1回の入院で300万元(約6000万円)の治療を行った老幹部もいるが、一銭たりとも払わないで済む。こうした特権階級の医療費を負担しているのが庶民なんですよ」 中国の医療制度の決定的な欠陥はこれだ。中国の高齢者には自己防衛の道しかない。 (つづく) (姫田小夏/ジャーナリスト)