「介護事業者」倒産145件、1‐10月で年間最多を更新「訪問介護」が過去最多、人手不足と物価高が重荷に
2024年1-10月「老人福祉・介護事業」の倒産調査
介護事業者(老人福祉・介護事業)の倒産が、2024年1-10月で145件発生した。これまで年間最多だった2022年の143件を上回り、2カ月残して過去最多を記録した。ヘルパー不足が深刻な訪問介護は、年間最多の72件に達し、デイサービスなどを通所・短期入所も高水準で推移している。2024年は介護事業者の倒産が年間170件を超えるペースで推移しており、社会的にも介護事業者の淘汰が深刻さを増している。 介護事業者の倒産は、介護保険法が施行された2000年以降、集計している。2024年は1-10月の累計が145件に達した。 業種別は、訪問介護72件(年間最多2023年67件)、通所・短期入所48件(同2022年69件)、有料老人ホーム11件(同2018年14件)、その他14件だった。 すでに2023年の67件を抜いて年間最多を更新中の訪問介護は、ヘルパー不足や燃料代などの運営コスト上昇に加え、2024年の介護報酬マイナス改定の影響が出ている可能性がある。 通所・短期入所は、30社超の連鎖倒産が発生した2022年を下回るが、連鎖倒産を除くと実質、過去最多ペースで推移。大手事業者との競争激化で脱落した事業者が多い。有料老人ホームは、施設数の増加による競合、物価高が影響し高止まりしている。 原因別は、販売不振(売上不振)が105件(構成比72.4%)で最多だった。利用者の減少などで報酬を得られず、売上不振の事業者が7割超を占めた。 形態別では、破産が137件(同94.4%)と、先行きの見通しが立たず破産を選択した事業者が多かった。事業規模は、個人企業他を含め資本金1,000万円未満が125件(同86.2%)、従業員10人未満が121件(同83.4%)、負債1億円未満が114件(同78.6%)と、小・零細事業者を中心としている。
介護業界は、コロナ禍の前から人手不足に悩まされ、さらに大手事業者や大手異業種の参入で競争が激化した。コロナ関連の資金繰り支援で倒産を一時的に回避しても、効果が薄れた2022年以降は人手不足、物価高が重なり、倒産の増勢が強まっている。 介護報酬は、公定価格のため価格転嫁は難しい。処遇改善の加算で介護職員の賃上げは徐々に進むが、賃上げピッチが他業界に追い付かず、厳しい状況が続いている。また、効率化が進む大手事業者と、過小資本の小・零細事業者は格差が広がっている。 今後、国や自治体の本格的な指導・支援がなければ、小・零細事業者の淘汰が加速する可能性が高い。同時に、業界でも協働化、再編など経営基盤の強化への取り組みが急務で、このままでは介護事業者の倒産に歯止めが掛からず、全国で『介護難民』の発生が現実味を帯びている。 ※ 本調査は、介護保険制度が始まった2000年から負債1,000万円以上の「老人福祉・介護事業」を対象に集計した。内訳は、訪問介護事業、通所・短期入所介護事業、有料老人ホーム、その他に分類した。