数字で見ても顕著…「昔の夏の方が過ごしやすかった」 7、8月の猛暑日は50年前の8倍に
世界的に進む温暖化の影響が鹿児島県内でも顕著になっている。人間が排出する温室効果ガスの影響で今後も温暖化は進むとされ、県民には変わっていく環境への適応も求められる。気候や海、農業での県内の異変を紹介する。(連載「温暖化異変 鹿児島の今」①より) 【写真】鹿児島の年平均気温の推移をグラフで見る
「昔の夏の方が過ごしやすかった。今はクーラーがないと無理」。鹿児島市に長年住む鬼塚明男さん(78)は、扇風機やうちわだけで平気だった少年時代からの変化を実感している。 同市では、7、8月の猛暑日は過去最高の39日間を記録。年間で5日間のみだった50年前から約8倍になった格好だ。熱帯夜の日数は57日間で、50年前の約2.5倍となっている。 県内の年平均気温は上昇が続く。昨年は19.5度で、100年前と比べて2.4度、50年前より1.9度高くなっている。気温上昇はここ50年で特に顕著だ。 鹿児島市は同じ50年で県平均よりも高い2.2度上がった。気象庁によると、クーラーの排出熱などのヒートアイランドの影響とみられる。 □ ■ □ 温暖化は住民生活に深刻な影を落とす。3日までの県内の熱中症疑いによる搬送者数は1990人。昨年6~9月の1455人を既に上回る。高齢化の影響もあり、将来のリスクはさらに高まる見込みだ。
公共交通機関にも支障が相次ぐ。JR九州は8月11日、レールの温度が基準値を超えたため指宿枕崎線など3線で徐行運転を実施。約2000人に影響した。「珍しいケース」というが、今夏は熊本や長崎でも発生した。 短時間強雨の頻度も高まっている。九州南部では1時間50ミリ以上の雨の2014~23年の年間平均発生回数は、1979~88年と比べて約1.6倍に増加している。気象庁によると、「気温が上昇すると空気中の水蒸気の量が増え、雨の強度が強くなる」。 一方で、雨が降らない日も多くなっている。年間降水量には大きな変化はないという。 □ ■ □ 温暖化の原因は、二酸化炭素などの温室効果ガスだ。国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、人間の活動が温暖化を引き起こしているのは「疑う余地がない」とする。 気象庁は気候変動の将来予測もする。温室効果ガスの削減が進まなかった場合、21世紀末と20世紀末では、九州南部の年平均気温は約3.9度上がり、1時間50ミリ以上の雨の回数は約1.9倍になると予想。台風は強度が増す見込みだ。8月下旬に県本土に上陸した台風10号は、海水温が平年より高かった影響などで「最強クラス」に発達した。
福岡管区気象台地球温暖化情報官の花房瑞樹さん(41)は「温室効果ガスの削減が重要だが、二酸化炭素の排出をすぐにゼロにしたとしても緩やかながら気温上昇は続く」と指摘。「経験したことのない高温や強雨のリスクは高まっており、備えを進めてほしい」と訴える。
南日本新聞 | 鹿児島