名馬にも苦手なことはある リバティアイランドが沈んだ2つの理由 井崎脩五郎のおもしろ競馬学
リバティアイランドは、なぜあれほど伸びなかったのだろう。 10月27日(日)に行われた天皇賞(秋)で、1番人気に支持されながら13着に敗れてしまったのだ。 13着といっても、勝ったドウデュースから0秒8差だから、惨敗というほどではないのだが、最終コーナーを絶好の外目(そとめ)3番手で回りながら、直線でいつもの伸びが見られなかった。 ペースは速くなかった。芝良の2000メートル戦で、逃げたホウオウビスケッツは、前半の1000メートルを59秒9で通過している。まったくのスロー。昨年、イクイノックスがレコード勝ちしたとき、逃げたジャックドールは1000メートルを57秒7で通過しているから、それと比べたら実に2秒2も遅いペースなのだ。今回、この遅いペースでスタミナを温存できたホウオウビスケッツは、人気薄で3着に逃げ粘っている。 それなのに、3番手を楽々と追走しているように見えたリバティアイランドが、13着に敗れてしまったのだ。追っても反応がなかった。 なぜ、あんなことになってしまったのだろう。 敗因として浮上しているのは、今回、リバティアイランドは「2カ月以上の休み明け」と「関東への輸送」が重なっていたことである。 この2つが重なったレースが、リバティアイランドには過去に一度だけある。一昨年の10月に行われた2歳牝馬のGⅢ・アルテミスS(東京芝1600メートル)である。あのときもリバティアイランドは、単勝オッズ1.4倍という1番人気に反して2着に敗れているのだ。このとき勝ったラヴェルは、その後、牝馬3冠で⑪④⑪着。これに対してリバティアイランドは牝馬3冠①①①着だから、こんなに強い馬がなぜアルテミスSで苦杯をなめたのか。出てくる答えは、「2カ月以上の休み明け」と「関東への輸送」が重なったときは、この馬、過信しない方がいいということではないだろうか。 どんな名馬にも苦手なことはある。その見本かも。(競馬コラムニスト)