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累計120万部を超え、絶大な人気を博する内館牧子さんの「高齢者小説」シリーズ。 待望の第五作である『迷惑な終活』が2024年9月に刊行！ 【画像】老後に迎える「終活」との向き合い方 注目作の見どころを、小説家の垣谷美雨さんにご紹介いただきました。 内館牧子『迷惑な終活』 やり残したことにケリをつけるのが、本当の終活だ。 年金暮らしの原夫妻。妻の礼子はいわゆる終活に熱心だが、夫の英太は「生きているうちに死の準備はしない」という主義だ。そんな英太があるきっかけから終活をしようと思い立つ。それは家族や他人のためではなく、自分の人生にケリをつけること。彼は周囲にあきれられながらも高校時代の純愛の相手に会うため動き始める。やがて、この終活が思わぬ事態を引き起こし──。 『終わった人』『すぐ死ぬんだから』『今度生まれたら』『老害の人』に続く著者「高齢者小説」第5弾！

新シリーズの争点はズバリ「終活」！

今作もテンポよく、笑いあり、ハラハラドキドキありで、最後まで一気に読んでしまった。そんなユーモラスでコミカルな中にも、人生の複雑さや切なさが存分に描かれていたから、思わず自分の来し方を振り返ったり、老後の暮らしを考え直すきっかけとなった。 内館氏の高齢者小説なるものは、『終わった人』から始まり、『すぐ死ぬんだから』『今度生まれたら』『老害の人』と続き、今回の『迷惑な終活』は待望の第五弾である。私はこれら全てを読んできたが、今作は特に心に響いた。登場人物それぞれの終活方法を知ったことで、それまで私がイメージしていた終活に対する考え方が根底からひっくり返ったからである。それと、以前から薄々感じてはいたが、六十代の私の世代と比べると、七十代の人々の心には封建主義的な男女観がより一層、色濃く残っていることに衝撃を受けたからでもある。 中心となる登場人物は、夫の原英太(75)と妻の礼子(71)だ。この夫婦間で、終活に対する考え方が大きく異なるところから物語は始まる。 妻は熱心にエンディングノートを埋める日々を送っている。この終活方法は、今や広く知られている。いわば「立つ鳥跡を濁さず」形式である。世の高齢者の多くが、自分の死後の段取りまで配慮する時代になった。家族の構成員が少なくなり、遺された一人一人の負担が大きくなったことも一因だろう。息子や娘は既に中年になっているが、墓や葬式や寺との付き合い方などの知識はほとんどない。それゆえ親の死後、難しい決断を迫られたり、面倒な手続きを手探りでやることになる。そんな負担をかけないよう、親は生前に断捨離を済ませ、遺産分割や葬式の段取りなどを決めておく。費用も負担させまいと、早々に墓を用意して戒名まで決めておいたり、または樹木葬を申し込んだり、墓じまいをしたりと、様々に考える。 それらを着実に実行しようとする妻に対して、夫は異論を唱える。そんな終活ならやりたくないと言うのだ。夫は言う。「謝罪したいことや、思い残すことなどを、死ぬ前に全部スッキリさせる。自分の人生にケリをつけて死ぬ。そのための活動が正しい終活だ」と。