将来「遺族年金」が5年で打ち切りになるって本当ですか? 受給額は“無期給付”の現在と比べ、どれだけの差になるのでしょうか? これまで専業主婦だったので心配です…
遺族年金の制度見直しが話題になっています。一部で「5年で遺族年金が打ち切りになるのでは?」「改悪だ」といった情報が広がっていますが、現時点ではこれらの見直しは検討段階であり、具体的な決定はされていません。 本記事では話題になっている遺族年金の改正案がどのような内容なのかを簡単に解説します。 ▼定年退職時に、「1000万円」以上の貯蓄がある割合は日本でどれくらい?
主な対象は20代から50代で子のない場合の遺族厚生年金
「遺族年金」は、大きく分けると遺族基礎年金と遺族厚生年金の2種類があります。 今回の遺族年金制度の主な変更対象と議論されているのは遺族厚生年金で、その中でも30歳~60歳の子のない配偶者が主な対象となります。そのため、子のある配偶者や、すでに遺族厚生年金を受給している高齢期の配偶者は、現行通りで給付内容は変わりません。 現在の遺族厚生年金制度では、30歳を超えた妻で子どもがいない場合、再婚などの失権事由に該当しなければ、夫の厚生年金の報酬比例部分の4分の3を無期限で受け取ることができます。ちなみに、夫死亡時に妻が30歳未満の場合は、現在の制度でも5年間の有期給付となっています。 今回の見直し案では、30歳から60歳までの場合でも5年間の有期給付に変更するという内容であったため「5年で打ち切り」という情報が出ているわけです(図表1)。 図表1
厚生労働省 遺族年金制度等の見直しについて また、これに加えて中高齢寡婦年金の段階的廃止も議論されています。中高齢寡婦年金は遺族厚生年金の受給権を持つ妻が40歳から65歳に達するまでの間に遺族厚生年金に追加で加算される年金で、2024年度は年間61万2000円が支給されます。こちらも段階的に受給権が発生する年齢を引き上げて、最終的には廃止が検討されています。
老齢厚生年金が変わる理由
そもそも、今回の遺族厚生年金見直しがなぜ議論されているかというと、現在の仕組みが時代に即していない点が挙げられます。 現在の遺族厚生年金は男女で扱いが異なります。これは、主たる生活維持者が夫(男性)であり、夫と死別した場合、妻が生活することが困難であるという前提で考えられているからです。 しかし近年は女性の社会進出が進み、特に若年層では就業率や賃金格差がほとんどなくなっています。令和5年の賃金格差を見ても、40歳未満は概ね80%以内であり、平成14年との比較では大きく改善されているため、賃金縮小の傾向は続くと考えられます。 世界に目を向けると、遺族給付の男女差解消は欧米各国では1980年代ごろから進んでおり、日本の今回の取り組みはかなり遅れていると言えるかもしれません。 図表2