幕内復帰の尊富士、「大尊時代」の到来へ まず「三役を目指したい。また優勝したい。ただそれだけですね」【はなわの相撲ヲタク対談】
年の納めの九州場所を前に、はなわが向かったのは幕内復帰を果たした尊富士(25)が所属する伊勢ケ浜部屋。春場所で110年ぶりの新入幕Vを飾り、一気にブレーク。はなわが胸を躍らせて待つ「大尊時代(たいそん)」の到来へ、尊富士の思いを聞いてきました。(構成・岸本隆) はなわ「九州場所での再入幕おめでとうございます! いろいろとニュースになってますけど見てますか。相撲ファンの間では、大関に昇進した大の里関と尊富士関がこれから2人で『大尊時代』をつくるなんて言われてる。ぼくもそう思ってます」 尊富士「そう言われていることは知っていますけど(笑)」 はなわ「どうですか。『大尊時代』というネーミングは」 尊富士「いや、ぼくらは、相撲を取っている側はあまり気にしていないですね」 はなわ「周りが勝手に盛り上がってるっていう感じ」 尊富士「今は大の里関が大関に昇進して盛り上がってますし。今年は自分自身も盛り上げたなとは思うんですけど、ぼく自身はもっと同級生(同学年)にライバルがいると思ってます。大関に豊昇龍関がいますし。まだまだ自分たちの世代には強い人がたくさんいますから」 はなわ「そっか、結構いますもんね」 尊富士「強い力士は、めちゃくちゃたくさんいますから」 はなわ「今はこの世代がグーッときてますからね。ここから誰が抜け出すかというところも楽しみ。ライバルたちがいて、そんなライバルたちと戦っていくことは楽しみでもありますか」 尊富士「楽しいですね」 はなわ「そうなんですね。『大尊時代』というネーミングもいいですよねえ。大の里関へはどんな思いを抱いてますか。大の里関は先に大関へ昇進しましたけど。そこに対する意識は」 尊富士「すごいなって思います。強いからこそ大関という地位にいますから。あんまり深くは考えないんですけど」 はなわ「今までも一緒にずっとやってきてますしね。伊勢ケ浜部屋で稽古をしていれば、どんどん強くなると思っていますが、この部屋に入ってよかったですか」 尊富士「この部屋で稽古してたら十分ですね。よかったと本当に思いますよ」 はなわ「宮城野部屋のみなさんも来た。宮城野親方(元横綱白鵬)からもいろいろアドバイスはもらいますか」 尊富士「普通に横綱3人(師匠の伊勢ケ浜親方、宮城野親方、照ノ富士)いますからね」 はなわ「そうですよね、すごい話っすよね、それは。最強ですね。お相撲さんも多い、稽古相手もいっぱいいる」 はなわ「春場所で110年ぶりの新入幕優勝を飾りました。あの時を振り返ってもらえますか。14日目に足首をけがして一度は休場を決めていたと」 尊富士「病院に行って、診断を受けて帰ってきて。その時、初めて立ったんですけど、もう歩けなくて。その時に無理だなあと思いました」 はなわ「照ノ富士関が来て、横綱の言葉で出場を決めたと」 尊富士「横綱が自分の寝床まで来てくれたんです。『状況どうだ』って言われて。親方には出られないと言っちゃってたんですけど」 はなわ「親方に言っちゃったんですね。そしたら、しょうがないなっていう感じで」 尊富士「でも横綱にも伝えたら、横綱自身がいろいろけがをした話をされて。『おれもそうだったし』と。けがで出た場所の話もされて。自分が場所前に『ファンの記憶に残りたい』って話したんですけど、『それで最後に出たら、もっと記憶に残るぞ』と横綱が熱い話をされて。横綱も熱が入って『そこで立ってみろ』って」 はなわ「さすがですね、横綱」 尊富士「最初は『立てないです』と言ったんです。そしたら『立ってみろよ!』と。『明日、出ろよ!』『気合入れろ!』みたいな。最初は立てなかったんですけど横綱は熱が入って。ぼくは冷や汗かいてそこで立って、自分の足で歩いたんです」 はなわ「ああ歩けるって。じゃあ横綱の言葉や気持ち的な部分で不思議な力が出てきた」 尊富士「次の日、起きた時も痛かったですけど(笑)」 はなわ「でも出るって言っちゃった。立てと言われて立って、親方に『出ます』と言ったんですか」 尊富士「親方は『うん?』みたいな。『相撲になんないだろう』みたいな。自分は『でも大丈夫です』と」 はなわ「すごいっすねえ」 尊富士「腹くくったっていう感じですね」 はなわ「次の日にテーピングも巻いて、痛み止めの注射も打ってという感じですか」 尊富士「はい。自分でもよく分からないですけど、(横綱が)怖かったです(笑)。なんか土俵に立つより横綱に言われた方が正直、怖いじゃないですか。て考えたら土俵に立つのが怖くなくなったので。横綱以上に怖いものはないと」 はなわ「そっか。横綱のことを裏切ったりする方が怖いと。でもあの優勝から街で『尊富士関だ』って声かけられるでしょ」 尊富士「あ、言われます。まあ、恥ずかしいですね」 はなわ「モテるんじゃないですか。大丈夫ですか、心配ですよ。モテすぎちゃうと」 尊富士「いやいや全然。ぼくは遊び人じゃないんで(笑)。真面目です」 はなわ「最後に、これからの目標は」 尊富士「目標というか、とりあえず三役を目指したいです。で、また優勝したいっていう、ただそれだけですね」 はなわ「また優勝してほしいな~」 尊富士「一回で満足できないですね。あの優勝は何回やってもいいですね」 はなわ「何がよかったですか、優勝して。こんなにすごいんだって思ったことは」 尊富士「やっぱり優勝っていうのは一瞬だけなんですけど、その一瞬のためにやってきたんだっていう、あの開放感ですかね。それが最高ですね」 はなわ「へ~。ほとんどの人が味わえないことですからね。すごいこと。でも、十両の先場所の活躍を見てたら、間違いなく幕内の今場所はやってくれる。楽しみにしています!」 関取には貫禄というか独特の感性がある。考えがしっかりしていましたねえ。 将来的に大の里関らと相撲界を支えていくと思っていますが、関取はそこを冷静にみている感じがしました。そんなところがとっても大人で、逆に恐ろしいなという感じでした。こちらからすれば、冷静だからこそ「大尊時代」がくるんじゃないかと思わせられましたね。 目標は三役と言っていましたが、しっかりとその先も見えているんでしょう。関取はどういう状況に追い込まれても乗り越えるすべを知っているようにみえます。どうなっていくのかと無敵な感じがしました。末恐ろしいですね。 ▼尊富士弥輝也(たけるふじ・みきや=本名は石岡弥輝也) 1999年4月9日生まれ、青森県五所川原市出身の25歳。184センチ、143キロ。青森・木造中から鳥取城北高を経て、日大に進んだ後の2022年秋場所で前相撲から初土俵を踏む。所要8場所で新十両に昇進し、十両を1場所で通過。年6場所制となった58年以降では史上最速タイの前相撲から所要9場所で新入幕を果たした今年の春場所で110年ぶりの新入幕Vを飾った。
中日スポーツ