絶対安定多数は「266議席」衆院選でカギとなる数字は? 早稲田塾講師・坂東太郎のよくわかる時事用語
総選挙があるたびに与野党から「勝敗ラインは」という議論が起きます。首相は最終的には衆議院の議決で決まるので与野党とも「過半数」でいいようなものですが、実際には「それでいい」「それでは足りない」という異論が出もします。選挙ではいろいろな数字がカギになってくるのです。そこで「衆院選をめぐる注目の数字」として以下の用語を考えてみます。 【写真】政党の「公認」「推薦」「支持」の違いは? なお14日投開票の第47回総選挙は「1票の格差」是正のため小選挙区を「0増5減」して総定数(小選挙区295 比例代表区180)は475です。09年総選挙の格差2.30倍が最高裁判所から「違憲状態」と指摘されて12年11月に山梨、福井、徳島、高知、佐賀の5県で定数を1つずつ減らすと決めました。しかし具体的な区割りが決まる前に選挙となり、2012年総選挙(2.43倍)は再び最高裁から「違憲状態」とされました。これでギリギリ「違憲」「違憲状態」の目安になる格差2倍未満を担保した形となっています。 これまでの総定数480から5議席分減ったことで、「注目の数字」も若干変わっています。
■「過半数」=238議席
単純に475÷2ではじき出します。前述のように首相は最終的に衆議院の議決が優先されるので、過半数さえ握れば現与党はそのままでいられるし、野党勢力が握れば政権交代も可能です。 なお、これより低い目標として「比較第一党」があります。比較的大きな3つ以上の勢力があって、それぞれが連立しないと仮定すると首相指名投票で3人以上の争いとなり、過半数を持っていなくても首相を出す与党になり得ます。これを少数与党と呼びます。
■「安定多数」=249議席
日本の国会は「委員会中心主義」を採用しています。17ある常任委員会で可決された法案などが本会議にかけられます。国会議員は1つ以上の常任委員である必要があります。安定多数とは、この委員会で与党が議長を出し、なおかつ委員の半数が与党である状態です。言い換えると委員の半分が野党なので可否同数が生じかねません。その際には委員長が決裁できます。委員長が与党出身ならば与党案を「YES」とするでしょう。 常任委員会は、予算委員会の50人や懲罰委員会の20人などのように、それぞれ委員の数(定数)が決まっています。安定多数は単に委員数の過半数。例えば委員数40人ならば40÷2=20人に1人を加えます。奇数の場合は小数点以下を切り上げます。うち1人が委員長になるので可否同数があり得るのです。 (1)委員数50人が1つ(述べ50人)。安定多数の条件を満たすには26人必要 (2)委員数45人が2つ(述べ90人)。それぞれ安定多数の条件を満たすには23人必要で23×2=46人 (3)委員数40が7つ(述べ280人)。条件を満たすにはそれぞれ21人で21×7=147人 (4)委員数35が1つ(述べ35人)。条件を満たすには18人必要 (5)委員数30が4つ(述べ120人)。条件を満たすにはそれぞれ16人で16×4=64人 (6)委員数25人が1つ(述べ25人)。条件を満たすには13人必要 (7)委員数20人が1つ(述べ20人)。条件を満たすには11人必要 ここで必要な人数を足し合わせてみると26+46+147+18+64+13+11=325人。 延べ人数は50+90+280+35+120+25+20=620人 したがって325÷620=0.5242(四捨五入)。これを総定数475と掛けると249人(小数点以下切り上げ)が安定多数と分かります。