【選手権】''黄色い壁''上田西が矢板中央を下し8強進出
第103回全国高校サッカー選手権大会は2日に3回戦8試合を実施。フクダ電子アリーナで行なわれた矢板中央と上田西のカードは、2-0で上田西が勝利した。4日の準々決勝では流通経済大柏と対戦する。 【フォトギャラリー】矢板中央 vs 上田西 試合の行方を大きく左右したのは序盤だった。MF7平野巧(2年)の縦パスから、FW10堀内凰希(3年)がPAの右外に飛び出すと、ゴール前へ仕掛けたところを倒され、矢板中央がPKを獲得。このチャンスにMF9渡部嶺斗(3年)が右隅を狙ったが、GK1牧野長太朗(3年)の読みに阻まれた。 「最初のPKを決めていれば完全にうちの流れになったと思うのですが、あそこがターニングポイントでした」。そう振り返るのは高橋健二監督で先制点のチャンスを逃した矢板中央は焦りから、攻撃が単調となり、以降は決定機まで持ち込めない。 「牧野のセーブでチームの流れが来た」と白尾秀人監督が口にする通り、ピンチを凌いだ上田西は勢いづき、11分には右サイドの高い位置でボールを持ったMF7松本翔琉(3年)のタメからDF2和泉亮哉(3年)がシュート。GKが弾いたボールをDF4東風谷崇太(3年)が押し込み、先制に成功した。 反撃に出たい矢板中央は前半半ば代名詞であるロングスローで見せ場を作る。15分には左からMF5田中晴喜(3年)がゴール前に投げ入れたボールのこぼれ球を堀内がシュートも枠の外。28分にもロングスローのこぼれ球を渡部が打ち返したが、牧野に阻まれた。38分には左からのサイドチェンジをMF石塚遥真(3年)が後ろにヘッドで落とし、DF4小倉煌平(3年)がゴール前へ。DFが弾いたボールをすかさずMF井内哲心(3年)が狙い、GKの脇を抜けていったが、カバーに入った東風谷がかき出し、上田西が失点を回避した。 矢板中央のパワフルな攻撃に苦しむチームは多いが、上田西はDF裏へのロングボールやロングスローを多用するチーム。「風にも上手く対応できていた。DFとGKの背後に来ていたけど、その練習はいつもやっている」と話すのは白尾監督で、耐性を持っていたのは大きかった。 後半3分に守備の要であるDF5緑川周助(3年)が負傷交代した影響もあり、後半の立ち上がりも押し込まれる場面はあったが、上田西は身体を張った守備を継続し、矢板中央に1点を与えない。前半の終盤から投入したFW11髙橋亮雅(3年)が相手DFの背後を狙い、相手が中を経過したところで、MF6池田博希(3年)とMF10鈴木悠杏(3年)のダブルボランチが、手薄となったサイドにパスを入れて押し返す場面を増やしていく。 後半8分には鈴木がゴール前に低く入れたボールをFW9柳沢纏(3年)が落とし、和泉がシュート。19分には松本翔の左クロスをファーサイドからゴール前に入った柳沢が頭で合わせるなど攻撃が勢いづくと、21分にはこの日2度目の決定機が到来。DF19山浦琉央(3年)が左から放ったロングスローがゴール前でワンバウンドすると、飛び込んだ柳沢が打点の高いヘディングで合わせて、上田西が2-0で勝利した。 シュート本数は矢板中央が17本に対し、上田西は9本と数字でも押し込まれる展開となったが、粘り強く守り、少ないチャンスを物にして勝利。試合後、白尾監督は「黄色のミツバチ軍団。蜂のように相手を刺して、最後までしっかり身体を張ってくれた。ロングスロー、コーナーキック、全部見てくれる人たちが感動してくれたと思う。自分たちは選手たちの成長に感動しています」選手を称えた。 敗れた矢板中央にとっては悔しい敗戦。「相手は物凄いシュートブロックで、昔の矢板中央を見ているようでした。黄色い壁がありました。打てど、打てど跳ね返されました」。そう振り返るのは高橋監督だ。惜しくも3回戦で敗れたが、以前とは違う攻撃的なサッカーを展開し、2年前の王者である岡山学芸館、今大会の顔といえるFW14高岡怜颯(3年)を擁する日章学園を1、2回戦で撃破した価値は大きい。十分な爪痕を遺した大会になったのは間違いない。 (文・写真=森田将義)