【白井元調教師と学ぶ血統学「温故知新」】 　元ＪＲＡ調教師の白井寿昭氏に指南役をお願いし、さまざまな角度から血統を考える連載の第８８回は、現在の血統ファンも注目するコンテンツ。好評連載中のサンデーサイレンス編を少し中断し、本年デビューの新種牡馬をチェックしていく。名伯楽にダービータイトルを贈ったレイデオロが今回の対象馬。どのようなジャッジを白井氏は下すのだろうか？ 　進行は東スポ競馬・関西地区本紙担当であり、白井氏との親交も深い松浪大樹記者。これまで以上に興味深い話の数々を堪能していただきたい。（※２０２３年６月２９日公開）

レイデオロ産駒の適性を探る

天皇賞・秋と日本ダービーを制したレイデオロ

　松浪大樹（東京スポーツ記者＝以下、松浪）サンデーサイレンスに関する話を中断し、今年の新種牡馬をテーマにして、白井先生に話を聞いています。現在の対象はダービー馬のレイデオロですね。 　白井寿昭氏（元ＪＲＡ調教師＝以下、白井）そうやったな。で、前回はレイデオロの血統の話をして、馬体がどうこう…というところで終了したんやった。 　松浪　レイデオロの産駒は無駄にマッチョでなく、スラッとした馬体の馬が多い。それは長距離を走る馬の特徴になるのですけど、その距離を走る馬の見極めは実に難しい。で、相馬のプロである先生に、ご教示をお願いしようと思いまして（笑い）。 　白井　で、今回を迎えたわけやけど、どこから話をしていく？ 　松浪　そうですね。では、どの部分からチェックを始めていくのか？　ここを教えてください。 　白井　そこは多くの人と同じ。まずは血統的な裏付けね。母系の流れを見て、それからブルードメアサイアー。 　松浪　バークレアからウインドインハーヘア。母の父はシンボリクリスエス。なるほど、レイデオロは文句なしですね。 　白井　一流馬が並んでいる。これはもちろんやけど、それらが距離もこなしている。こんなのが理想。クラシックを狙う場合はね。 　松浪　淡泊なのも、少し困る？ 　白井　柔軟性があったほうがいい。体だけの話でなく、距離の融通が利くという意味で。 　松浪　なるほど。次は馬体の見方になると思うのですけど、これが素人には難しい。 　白井　いつも言っていることやけど、まずは全体的なバランスな。で、次に顔面（かおづら）。 　松浪　顔面ですか？ 　白井　うん。大事なことやで。そこにいろいろなものが出てくる。人間と一緒。 　松浪　他には？ 　白井　脚やね。特に飛節の部分。仮に芝の中距離以上を走らせたいと思うのであれば、つなぎが立っているのは敬遠する。その部分の角度。これが大事。 　松浪　しなやかさが必要ということですね。芝の中距離以上を走るのであれば、つなぎは柔らかいほうがいい。 　白井　それは間違いない。で、立たせたらな。臀端と飛端と一直線にビシッと。前にも言ったけどな。これが理想の形。競走馬のね。 　松浪　それは写真を撮って確認するんですか？　それとも目視で？ 　白井　自分の目や。写真はピタリとハマらんと間違えるときがある。だから、まずは歩かせてみてさ。スッと立ったときにチェックする。これの繰り返しや。 　松浪　なるほど。馬は歩かせてナンボと言いますが、それが理由なんですね。 　白井　横からだけでもダメやで。前からも後ろからも見て。 　松浪　前から見たとき、脚の形や動きにブレがないかの確認。それこそが大事。 　白井　そう。脚の向きね。開いているのも良くはないけど、そんな感じのでも走るのはおるよ。でも、内向しとるのはあかんな。どんどん内に向いてくるから。膝にくる。で、故障につながる。