2話考察『海に眠るダイヤモンド』鉄平(神木隆之介)たちの複雑な関係!
3人のヒロイン、3色のドラマ、そして昭和と令和が重なってゆく
過去の物語では百合子(土屋太鳳)にスポットが当てられ、令和ではいづみ(宮本信子)と玲央(神木隆之介)が距離を縮めていく……。日曜劇場『海に眠るダイヤモンド』(TBS 毎週日曜よる9時~)2話を、ドラマを愛するライター・釣木文恵と、イラストレーターのオカヤイヅミが振り返ります。
描かれる百合子の「複雑さ」
昭和の端島(軍艦島)に暮らす人々の、思いの矢印が見えてきた2話。 1話ではリナ(池田エライザ)の登場が描かれていたが、2話でスポットが当たったのは百合子(土屋太鳳)だった。 いつも華やかな服装に身を包む百合子は、鉄平(神木隆之介)とともに進学で一旦は長崎市内に出て、賢将(清水尋也)とつきあっている。先進的で自由奔放に見える彼女だが、実は早くに姉を亡くし、以来母はひたすらキリスト教の信仰に傾倒している様子が窺える。大きな台風が端島を直撃した夜もひたすら神に祈る母を見て、百合子は「浦上(天主堂)の上にだってピカは落ちたんだよ!」と叫び、十字架を暴風雨の外に投げ捨ててしまう。姉は原爆で亡くなったのだろうか。活気にあふれているこの端島の姿にすっかり忘れていたけれど、ここで描かれているのは第二次大戦からそれほど経っていない時代であること、地理的にもすぐそばで原爆が落とされていることを突きつけられ、ハッとする。 「複雑なのよ、私も」とリナにこぼす百合子は、周りを冷静に観ている。朝子(杉咲花)が鉄平を好きなこと。鉄平がリナに思いを寄せていること。つきあっている賢将が実は朝子のことを好きで、手も握れないこと。 現代のいづみ(宮本信子)が「あれは何角関係だろう」と思いを馳せる昭和の鉄平たちの関係は、百合子の内面同様、じつに複雑だ。その思い思われの関係を、当時流行っていたという、四角形にペアが入れ替わっていく「スクエアダンス」に重ねて描く鮮やかさ! このダンスを長崎から百合子が持ち込む姿を通じて、当時の端島の人々がどのように娯楽を楽しんでいたかもわかる。 そして、2話で外せないのが、水。真水がない端島にわざわざ船で真水を運んでいたこと、だから島民にとって水はとても貴重だったこと。その貴重な水を配給制で分け合う人々のにぎわいの一方で、台風が直撃すると真水を運ぶ船が島に来られず、水害のみならず水がなくなる危機に陥ってしまうこと。そして、長年検討されてきた海底水道プロジェクトが実現に向けて動き出す中で、完成した時の端島がどうなっているか、心に不安がよぎる賢将の父、辰雄(沢村一樹)の姿も……。端島の表と裏、光と影が水によって描き出された。2話全体を貫く水の描写の中でも、台風シーンはすさまじかった。鉄平たちが暮らす宿舎が浸水する様子や朝子が働く食堂の危機もなかなかの過酷さだったが、妻を失った鉄平の兄・進平(斎藤工)と、リナとが海沿いで大きな波をかぶるシーンのダイナミズム! 見つめ合う二人! そこに、『宮本武蔵』のフィルムを追う島の映画館館長の大森(片桐はいり)!! ドキュメンタリーとラブロマンスとコメディが畳み掛けてくる、屈指のシーンだった。