どう猛で狂犬病リスクもつアライグマ かわいく描かれすぎたラスカルの功罪
昨年10月、秋葉原の繁華街にアライグマが1頭出没し、警察や消防まで出動して大捕り物劇が展開されたニュースを覚えている読者もおられるかと思います。当時は、なぜアライグマがこんな街の中で見つかったのか、誰か飼育していたものが逃げ出したのではないか、と、その出所が話題になりましたが、この騒動から、おそらくアライグマは、私たちが想像している以上に都会に進出しており、その数を増やしているものと推測されました。 都会にまで浸食するほど、実はこの国にはアライグマが蔓延しているのです。アライグマは北米原産で、1960年代から各地の動物園や公園で飼育されていた個体が逃亡して、野生化が始まったとされます。70年代に入って、アライグマの子グマと少年の友情を描いた有名なアニメーションがきっかけとなって、年間1500頭以上のアライグマがペットとして輸入され、飼いきれなくなった個体が大量に野外に逃がされたことで、国内で急速に分布が拡大してしまいました。
ペットには不向きで、自然に帰したところ大繁殖
このアニメーションのもっとも罪深いところはアライグマをあまりにかわいらしい、人なつこい動物として描いてしまったことでした。実際のアライグマは、暴れん坊で、人に慣れても、決してなつかず、飼い主に対しても平気で咬む、引っ掻くなど、大変攻撃的であり、しかも大食漢で、とても一般家庭がペットとして飼育できる代物ではなかったのです。 さらにこのアニメーションのマズかった点は、野生の動物は自然に帰してあげるのが一番幸せ、と言って、最終話で主人公が飼っていた個体を逃がしてしまったシーンでした。そうした結末も相乗してか、成長して手に負えなくなった飼育個体を野外に逃がしてしまう飼い主が続出してしまったのです。 その結果、アライグマはこれまでに沖縄を除く全国で生息もしくは分布が確認されるまでに至り、日本でもっとも繁栄に成功した外来哺乳類となってしまったのです。 雑食性の彼らは、様々な農作物を食害したり、養魚場の生け簀の中に飛び込み、魚を食べたり、牛舎や鶏舎を襲ったりする等、甚大な農業経済被害をもたらします。また神社仏閣などの歴史的建造物に忍び込み柱や門に傷をつけるなどの被害もたびたび報告されており、個人の住宅にも住み着き、建物の損壊や糞尿によって悪臭を放つなどの公衆衛生に関わる問題も広がっています。