ある女性の「絵日記」漫画が90万部突破&ドラマ化。4人の読者に聞く「つづ井さん」の魅力
つづ井さんは何故カッコいいのか
絵日記に収録されている話は基本的に楽しいことばかりだが、もちろんつづ井さんの日常全てが楽しみで彩られているわけではない。 『裸一貫!つづ井さん』シリーズの開始にあたって2019年9月に公開されたnoteでは、「若い女性なのに彼氏もいなくてかわいそう、寂しいはずだ」といったような言葉を対面で何度も言われた経験について触れている。 「彼氏いないんす~ヤバ笑笑」「自分マジモテなくて笑笑」と自虐に走ること数年、円形脱毛症になってしまったという。 自虐をせず、「ただ生きてて楽しい」という正直な今の現状を、変に謙遜せずそのまま絵日記にしたいという決意を綴り、note内で1万3000の「スキ」がついた。 マユミさんは、こうした姿勢について尊敬の念があると話す。 マユミ: : 多分、絵日記に書いてないところで、いろいろ大変なことが起きてるだろうし、『好きな人いないの?』みたいなことを聞かれてると思うんです。それでも、絵日記にはポジティブでハッピーな瞬間を残そうって貫いてるように見えて。それがすごい素敵だなって思うし、カッコいいなって思うんです。 私もつづ井さんをカッコいいと強く思った瞬間がある。「メタタクシー」というPodcastの中で、「絵日記を書く際のマイルール」を2つ紹介しているのを聞いた時だ。 一つ、友人のモノローグをつけないこと。つまり、友人はこの時こんなことを考えていただろうと勝手に想像しないこと。漫画としては、この時こんな風に思って突っ込んでくれていたらラクだろう、というシーンはあるが、それはしないという。 この姿勢は、愛犬の看取りを綴った『老犬とつづ井』という作品でも一貫しており、犬が人の言葉を喋ることはない。あくまで、究極的には分かり合えない種族同士という前提で描かれている。 もう一つは、絵日記のために面白いことをしないこと。この順番が崩れると、実際の人生を絵日記にして世の中に発信している者としておかしくなってしまいそうだからだと話す。 他にも、作中では前世からの友たちに書いた内容を公開前に問題ないか確認する様子も見て取れる。 エッセイ漫画や私小説は実在の人物を扱う以上、本当に言った言葉なのか、登場する人物が描かれ方に同意しているのかなどの点が難しく、しばしば問題になる。 それ故に、このジャンル自体を素直に楽しんでいいものか、楽しむことで誰かを傷つけていないのか、心のどこかで不安に感じることがあった。 だが、つづ井さんはこういったルールについて明言してくれることで、安心して楽しめるのだ。 『裸一貫! つづ井さん』以降、本シリーズには英語の副題がついている。 『裸一貫!』には「INDEPENDENT WOMAN TUDUI(自立した女性、つづ井)」。最新作の『とびだせ! つづ井さん』では「FREE WOMAN TSUDUI SAN(自由な女性、つづ井さん)」だ。 どんどん自由になり、解放されていくつづ井さんをこれからも「推し」ていきたい。
野田 翔