都知事選終わる 現職3選の厳しさと難しさ
さて、話を小池氏に戻します。小池氏は291万8015票を獲得、「圧勝」ではありましたが、私は小池氏の「勝ち方=票の取り方」に注目していました。 東京都のトップが知事になってから行われた都知事選は今回で22回目。小池氏のほかに3選以上を果たした知事は4人います。安井誠一郎、美濃部亮吉、鈴木俊一、石原慎太郎の4氏。4氏に共通するのは、得票率が2期目をピークに、3期目以降が、目減りしているということです。 2期目から3期目にかけての得票率の変遷です。 安井誠一郎 61.23%→50.93% 美濃部亮吉 64.77%→50.48% 鈴木俊一 60.16%→57.81% 石原慎太郎 70.21%→51.06% 得票率そのものは、時の対立候補にも左右されますが、ここに2期目から3期目に向かう知事の厳しさ、難しさがあります。 初当選では新たな都政に対する有権者の期待を一身に背負います。1期目で植えたいわゆる「政策の苗」は、2期目になって刈り取られます。それは大きな成果となるものもある一方、未達に終わるものや、“失政”と総括されるものも出てきます。石原都政では、前者は「ディーゼル車規制」などであり、後者は「新銀行東京のとん挫」でしょう。公約未達や失政に対する批判が高まるのも2期目から3期目の時期の特徴です。 現職の知事が行政に対する限界を感じるのもこのころ。さらに、この時期は往々にして人事が停滞すると言われます。気心知れた「お友達」で脇を固める傾向があるのです。「権不十年」とはよく言ったもので、こうなると、不正の温床もできやすくなります。 批判をかわすため、3期目に新たな政策を展開していくこともままあります。石原都政ではそれが「東京五輪誘致」でした。五輪誘致は石原都政では実現に至りませんでしたが、猪瀬都政でリベンジを果たし、小池都政の2021年に開催をみます。 さて、小池氏の得票率はどうだったか……2期目の59.70%から今回は42.77%となりました。この数字を内外はどう判断するでしょうか。「反小池票」の主な受け皿が石丸氏となったことは明らかでしょう。小池都政はそうした批判票に対して、今後どう対応していくのか…「東京大改革3.0」では、「セーフシティ」「ダイバーシティ」「スマートシティ」を掲げ、その筆頭に「首都防衛」を挙げていました。「木造住宅密集地域の解消促進」「調節池の整備」「無電柱化の推進」「マンション防災の強化」「シェルターの整備」「避難所改革の推進」「富士山噴火を想定した降灰対策推進」「グリーンインフラ」……今回の都知事選で災害対策は子育て・少子化対策の陰に隠れがちでしたが、これは焦眉の急です。 今回の東京都知事選挙の投票率は60.62%。前回を5.62ポイント上回り、衆議院選挙の同日だった2012年以来の60%台となりました。また期日前投票は215万1251票に達し、過去最多。有権者の18.7%に上りました。今回の選挙はポスターの掲示板や政見放送で様々な物議を醸しましたが、SNSの活用が定着し、新たな選挙のカタチが生まれたと言えるかもしれません。 都知事選から一夜が明け、小池知事は都幹部を集めた庁議で「重責に身が引き締まる思い。一朝一夕にはできないが、職員の力を活かし、都政を前進させる」と訓示しました。まさに「勝って兜の緒を締めよ」……3期目の小池都政に対し、新しい時代の都民の目が光ります。 (了)