スカニアジャパンの新大型トラック「スーパー」はスポーツカーも採用するメカを起用
2024年4月25日、スカニアジャパンは23年11月に日本で販売を開始したスカニアの新型大型トラック「スーパー」について説明をする記者懇談会を開催した。スカニアはスウェーデンの商用車メーカーで1891年に創業。100以上の国や地域に展開し、年間で約10万台のトラックやバスを生産。現在はVW(フォルクスワーゲン)グループに属し、北米のナビスターやドイツのマンなどを含むTRATON(トレイトン)グループの一員となっている。 新型スカニア「スーパー」は、5年の歳月と総額20億ユーロ(約3140億円)を超える研究開発費を投じて自社開発したパワートレーンを搭載。昨今、電動トラック、代替燃料のトラックに世界的な注目が集まっているが、スカニアとしては日本において、インフラ整備、サービス、メカニックのトレーニングなどを踏まえると、いきなり電動化にジャンプアップするのは非常に難しいと考えたという。こうした過渡期に、燃費やCO2排出量、ランニングコストを低減した進化版として新型車の「スーパー」を投入した。 【画像】スカニア スーパーの写真を見る 日本では2024年に施行された働き方改革関連法による「物流の2024年問題」に直面しており、自動車運転業務の時間外労働の上限規制の導入によって、輸送コストの上昇とドライバー不足という2つの問題が業界に影響を与えている。こうした物流業界の課題に対して革新的な解決策をもたらし、運送会社の競争力を強化するのがスカニアの新型トラック「スーパー」なのである。具体的には以下の4つのソリューションを盛り込んでいる。 ■クラス最高の燃費効率 高効率で高い燃費性能をもったパワートレーンを新設計。電気や水素の時代といわれながらも、スカニアは本気で化石燃料のエンジンを1から作り直して、すべてドライブトレーンの設計をやり直し、効率を高めている。ヨーロッパでは現行車に対して燃費効率が8%改善されたとのことである。 2023年7月にドイツで開催されたトラックのコンペティション、ヨーロピアントラックチャレンジでは、燃費部門でスカニア「スーパー」は1位を獲得。競合車よりも4.9%上まわって2位を引き離しての勝利だったという。 エンジンは3つのパワーラインを持っており、中心となるのは直列6気筒13LのDC13型エンジンで、吸排気の改善、燃焼の最適化、摩擦抵抗の低減などを通じて燃費向上と低速域でのトルク向上を実現。560馬力/1800rpm、2800Nm/900~1400rpmの性能を発揮している。従来のOHV(オーバーヘッドバルブ)から、スカニア初のDOHC(デュアルオーバーヘッドカムシャフト)を採用した直列6気筒に生まれ変わった。熱効率は通常の30~40%から50%へと大幅にアップしている。 このエンジンを支えるのが新しいギヤボックスで、今回初めて回転を合わせるためのシンクロナイザーを廃止。レイシャフト制御によって、速くスムーズな変速を実現している。シンクロ機構の廃止によって、軽く小さなギヤボックスを完成させることができた。また、フリクションロスを減らすため、スポーツカーに採用されているようなオイル潤滑方式のドライサンプ方式を採用。欲しいところに欲しいぶんだけオイルを加えるという設計をしていて、ギヤボックスだけで1.5%の燃費効率向上に貢献するとのことである。 ギヤボックスの後ろに配置しているリヤアクスルもすべて新設計。オイルを減らしつつ潤滑ができるハウジングを形成。軽量化や伝達性能の向上が図られ、さまざまな運搬用途に対応する汎用性を備えている。こうした改善によって、約1%の燃費向上に貢献。 ■デジタルサービスエコシステム「マイスカニア」 ソリューションの2つ目がデジタル化。オンラインプラットフォーム「マイスカニア」を通じて、管理者がパソコンやスマートフォンから車両の稼働状況やドライバーの安全性・運行状況をリアルタイムで管理・監視することが可能となった。いわば“つながるクルマ”である。このマイスカニアの中心になるのが、スマートダッシュと呼ばれるような大きな2つのモニターを備えたダッシュボード。運転席前のモニターでは、ADAS(先進運転支援システム)の作動状況を表示。ドライバーにいち早く危険を知らせて、事故を回避する。稼働率を上げるために重要な方策である。 ■燃費向上をサポートするドライバーアプリ スカニア「スーパー」では、ドライバー自身の運転スタイルを認識し、改善することで燃費向上を目指すドライバーアプリの利用が可能。このアプリケーションを使用することで、ドライバーはスマートフォンから自身の運転スコアと改善ポイントを可視化してチェックすることができる。 ■プレミアムで快適な車室内環境 最後の4つめのソリューションは、魅力あるクルマをドライバーと経営者に供給したいという思い。スタイリッシュな外観、2つのデジタルダッシュボードもあり、内装も高級車に負けないヨーロピアンなデザインを日本に持って来ている。 ◆◆◆ これら4つのソリューションを新型車「スーパー」に盛り込んでいる。車型は、一般的なボリュームマーケット向けでは27モデルを展開。一方で、スカニアが一番得意とする特殊車両などのニッチマーケット向けには31モデルを日本に導入している。 なお、「スーパー」というネーミングは、1961年にターボチャージャーを搭載したディーゼルエンジンをスカニアが開発し、このエンジンを「スーパー」と呼んだのが始まり。以降、ターボチャージャーを持ったエンジンを「スーパー」と呼び続け、同社で伝統的に使われてきた呼称である。今回、新型車に(中心的なラインアップでは)13Lのエンジンとターボチャージャーが組み合わされることになり、車両の愛称としても使用することになったものだという。 人間を中心に置いたクルマづくりを推進しているスカニア。その最新モデル「スーパー」にはドライバー、経営者への“お客様ファースト”が貫かれている。 〈文=ドライバーWeb編集部〉
編集部(yoshikawa)