アメリカで進化した川澄奈穂美 思い出の地での決戦に挑む
アジアカップ(5月14日~)に臨むなでしこジャパン。8日にはニュージーランドとの親善試合(キンチョウスタジアム=大阪)で勝利し、初のアジア制覇に弾みをつけた。エース大儀見優季を欠いた中、高瀬愛実と途中出場の菅澤優衣香の両FWがゴールし、初招集の吉良千夏、猶本光、乗松瑠華らがピッチに立つなど収穫の多い試合となった。そんな中、ひと際輝きを放っていたのが“アメリカ帰り”の川澄奈穂美だった。 ■アメリカで得たもの 移籍先のアメリカから帰国してすぐの試合だったが、疲れを感じさせず、攻守に渡ってアグレッシブなプレーを見せた川澄。そのプレーには、移籍前までと大きな変化が見られた。日本とアメリカとの違いは少なくない。ポジションに関係なく、遠い距離からでも積極的にシュートを打つ。日本では確実に通るパスも、足が長いアメリカの選手にはインターセプトされてしまう。移籍してまだ2ヶ月弱だが、川澄は、そういう違いを肌で感じてきた。「これまではボールを持ったら、まずパスの出しどころを探していたんですが、今はボールをもらったら前に仕掛ける(ゴールを狙う)意識が高まり、ファーストタッチでボールを置く位置が変わりました」。 昨シーズンまでは裏に抜けたり、周囲と連携して崩すプレーが多かったが、このニュージーランド戦ではドリブルで仕掛ける場面が増えた。ゴールに近い位置でパスを受けると、対峙する相手をおびき出すように足元にボールをさらす。相手が食いついたところで鋭く切り返して、シュートを放つ。川澄をマークする相手は守備に釘付けになり、ほとんど仕事をさせてもらえない。こういったプレーは、細かくパスを繋ぐ日本の攻撃の中で、アクセントを生み出し、アジアカップでも相手にとって脅威なるだろう。 11年のドイツW杯準決勝のスウェーデン戦で2ゴールを決め、鮮烈なインパクトを与えてから3年。その後も川澄は一段一段、階段を上ってきた。なでしこリーグでも得点王(11年)、MVP(11年、13年)に輝くなど、常に日本女子サッカーの最前線を走り続け、今年、海外リーグへの挑戦を決断した。女子サッカーの海外移籍は、多くの選手が欧州のクラブを選ぶ中、あえてアメリカに新天地を求めたことには理由がある。アメリカのサッカー協会は今季、国内リーグの活性化のために、国外に出ていたアメリカ代表選手たちを呼び戻す策を講じた。それによりハイレベルな戦いの場となる。さらに、アメリカのシーズンは4月~8月で行われるため、シーズン終了後に帰国すれば9月からトップコンディションのまま、年末まで続くなでしこリーグと皇后杯でプレーすることができる。川澄は『INAC神戸より半年間のレンタル移籍』という形で、1シーズンに日米2カ国のリーグでプレーすることを選択した。「アメリカへの移籍は、自分にとっては挑戦の過程です。挑戦は果てしなく続いていくもの。いいことも悪いことも、経験すれば絶対に自分の糧にできる自信はあります」と川澄。