「第九」地方で市民集めて合唱、「恥をかくだけ」と周囲は冷ややかだったが…「また歌いたい」37回継続
延岡の第九も団員確保は年々難しくなり、先月の第37回に集まったのは約90人。初回の約4分の1だった。入場料収入も減り、フルオーケストラと共演するのも最近は3年に1度となった。それでも毎年、熱心に参加する団員がおり、公演はコロナ禍で中止された2020年を除き毎年続いている。
平和や愛への思いが込められた第九には「すべての人々はきょうだいとなる」の意味の歌詞がある。末藤さんは「世界をつなぐ歌であり、そのキーワードは現代にも共通する。ドイツ語で歌うのは難しいが、うまくなりたいと挑戦し続けてきた」と笑顔で話す。
23年に初めて合唱団に入り、昨年も参加した看護師の山崎朱美さん(44)(延岡市桜小路)は小学生の頃、母に連れられて延岡の第九を聴いた。美しい音色が忘れられず、「いつか一緒に歌いたい」と思ってきた。「いろんな年代の人の複雑な音が重なり合って全体を作り上げる。歌声が一つになると音の一部になれたと感じる」と魅力を語る。
毎年、一般公募によって春に結成された市民合唱団が約半年、練習を重ねて本番を迎える延岡の第九。「ここまで続いているのは市民のまた歌いたいという熱量に他ならない」と赤澤さんが話すように、団員になった市民の歌声が聴いた人に感動を与え、その歴史が続いてきた。団員を派遣し合い足りないパートを補うなど連携してきた「おおいた第九を歌う会」の酒井事務局長は「第九の精神を受け継いで活動を続けてほしい」とエールを送る。