「伝え方が変われば社会が変わる」国内初、政治家の演説をAIが診断 SNS普及で「バズる」コンテンツに。史上最年少の兵庫県芦屋市長も学んだスピーチ術
スピーチの研修を手がける東京のスタートアップ(新興企業)「カエカ」が、人工知能(AI)を使って政治家の「話す力」を数値化する国内初のサービスを始めた。これまで客観的な評価が難しかった演説を定量的に分析。強みと弱みを可視化した上で、個々の特徴を磨く狙いだ。「ネット選挙」を解禁する改正公職選挙法の成立から今年で10年。交流サイト(SNS)の普及で、政治家の演説も「バズる」時代を迎えている。話し方のトレーニングを受けたことで、技術の向上を実感するだけでなく、自身の経験を振り返る機会になった、という政治家もいるようだ。(共同通信=浦郷遼太郎) 【写真】史上最年少26歳で市長当選 高島崚輔氏 東京大を経て米ハーバード大を卒業
▽話す相手はパソコン、AIが数値化 6月に始まった演説力診断サービス「kaeka score politics」は1回2980円でパソコンがあれば誰でも、どこでも受けられる。パソコンのサイトで会員登録をして受験料を支払うと、診断がスタート。まず、こんな設問から始まる。 「選挙期間2日目に地元の人通りが多い場所で朝の演説を行っています」 「道行く人に自分の名前を覚えてもらうために、1分~1分30秒で演説してください」 街頭演説や応援演説、議会質問といった場面や、マイクの有無、話す時間帯といった具体的な条件が設定される。「受験生」となる政治家はパソコンに向かい、状況に応じて計6回の演説をこなすと、3日から2週間程度で結果が送られてくる。 分析では以下の4要素を100点満点で採点する。 (1)筋の通る話をする力(PLOT) (2)事実を扱う力(FACT) (3)ストーリーを伝える力(STORY)
(4)核心を伝える力(CORE) 希望者はカエカに所属するスピーチの専門家から1時間程度のフィードバックを受けることもできる。 現状、4要素は専門家による「人力」の診断で、AIは声の高さや間の取り方、話す速さを数値化する。項目別に「あなたの地声は平均的な高さで、幅広い声域を使い分けることができています」「日常会話よりも少し遅めで、人々の注目を集めるのに適切なスピードです」といった評価が示される。将来的には、AIが診断する領域を演説の内容そのものにも広げたい考え。 カエカ代表でスピーチライターの千葉佳織さんは、サービスの普及に期待する。「伝え方が変われば、社会も変わるのではないか。サービスを通じて政治家が自らを振り返ることができれば、国民が共感する話し方のできる人が増えるはず」 ▽「選挙が楽しくなる」好影響も ビジネスマン向けのスピーチトレーニングや原稿執筆などのサービスを提供してきたカエカでは、国会議員や地方議員をはじめ、160人以上の政治家にもスピーチの研修を実施してきた。