亡き夫とのランチメニュー 心にしみた優しさのスパイス
日常で感じた親切への感謝をはがきにエッセーとしてつづった第40回「小さな親切」はがきキャンペーン(読売新聞社など後援)で、豊田市の会社員南平茜さん(38)が大賞に輝いた。南平さんは、余命宣告を受けていた夫、晃良さんとの外食時に触れた優しさを「14:05のランチメニュー」としてしたためた。 2022年5月、先天性の心疾患があった晃良さんが余命宣告を受け、在宅介護が始まった。外出する機会が減った晃良さんを元気づけようと、10月、トヨタ会館に出かけた。その日の昼食は元気な頃に行きつけだった喫茶店に寄ることにした。 しかし、車いすの移動や医療器具の準備に手間取り、入店できたのは、ランチタイムの午後2時を過ぎていた。周囲にはまだランチを楽しむ客の姿があり、あきらめようにもあきらめられず、せっかくの外出で浮かれていた気分が沈んでいった。 時間は午後2時から5分過ぎ。注文を取りに来た女性店員は意外な一言をかけてくれた。「ランチメニューも大丈夫ですよ」。午後2時前には店の前に到着し、車いすの準備をする姿を見ていたという。時間を確認した南平さんに、「すでに店の前におられましたから」とさらりと応えた。 介護生活を送る中で、これほど人の親切が心にしみたことはなかった。夫とともに注文したカレーは、優しさのスパイスも加わり、「本当においしかった」と振り返る。 同年12月に晃良さんは42歳で亡くなった。その晃良さんは、喜劇団「笑劇波」の座長を務め、南平さんが2代目を引き継いでいる。「劇団は2人の子どもと一緒。受賞を励みにもっともっと面白い活動をしていきたい」と、受賞の報告とともに晃良さんに、そう誓った。