品数“厳選”勝負で業績好調の「業務スーパー」が抱える2つのジレンマ…ユニクロやニトリに類する神戸物産のビジネスモデル
「業務スーパー」を運営する神戸物産の業績が好調だ。2024年10月期は1割の増収。これは3期連続の2桁での増収で、売上高は初めて5000億円を突破した。営業利益も1割の増益。2期連続の営業増益で、過去最高を更新し続けている。そんななか、足元で進めているのが外食・中食事業の強化なのだが、いったいなぜなのか。 【グラフ】神戸物産の業績推移
来期の業績見通しを早くも引き上げ
神戸物産は2024年3月期の期初に売上高を前期比7.9%増の4980億円、営業利益を同0.9%増の310億円と予想していたが、着地は売上高が99億円、営業利益が34億円とそれぞれ上振れた。 決算を発表した12月13日に中期経営計画の上方修正を発表。来期(2026年10月期)の売上目標を190億円、営業利益を40億円引き上げており、足元の好調ぶりがうかがえる内容だ。 業務スーパーの直営はわずか4店舗、1000以上展開する店舗のほとんどがフランチャイズ加盟店だ。 神戸物産は商品の製造と卸を行ない、店舗の仕入高の1%程度という加盟店からのロイヤリティで収益を得ている。 全国スーパーマーケット協会によると、業界の平均的な営業利益率はおよそ1%(「スーパーマーケット年次統計調査」)だが、神戸物産は7%に近い。 これはビジネスモデルの違いによるところが大きい。 ただし、フランチャイズ加盟して211店舗運営するG-7ホールディングスの2025年3月期上半期、業務スーパー事業の利益率は3.9%と高い。 神戸物産が開示している業務スーパーの標準的な店舗の営業利益率は2.1%。平均的なスーパーよりも高収益体質なのが特徴だ。 ここが一番のポイントで、神戸物産は加盟店オーナーを儲けさせるモデルを構築し、業績拡大に弾みをつけているのだ。
価格を抑えられているのはなぜか
一般的にスーパーマーケットはおよそ1万種類もの商品が置かれていると言われている。しかし、業務スーパーは5000を超える程度の品数だ。 フランチャイズオーナーの意向はあるものの、生鮮食料品はほとんど扱わず、冷凍食品や調味料、加工食品に強みを持っている。 売れ筋商品にフォーカスして廃棄も少なくしているため、店舗の収益力を高めやすいのだ。 一番の特徴である安さの背景にあるのが、スケールメリットとプライベートブランド(以下、PB)だ。 日本で1000を超える店舗を持つ会社は、ボランタリーチェーン方式で加盟店を支援する全日食チェーンや、イオンの小型店舗である「まいばすけっと」など数が限られるのだが、業務スーパーもそのうちのひとつで2024年10月末時点の店舗数は1084。 さらに、今期は1118まで増やす計画を立てている。 しかも、業務スーパーは知名度の高いブランドの商品はあまり扱っていない。 醤油やマヨネーズ、ケチャップなどの調味料は超大手の寡占化が進んでいる。 そうした状況のなか、知名度が高くはないブランドの調味料を製造する会社にとって、大量に商品を購入する神戸物産は好都合だ。多少の値引き交渉があっても取引を厭わないだろう。 大手メーカーの商品は価格優位性を獲得しづらく、業務スーパー側にとっても商品を低価格で販売できるというメリットが生じるのだ。