品数“厳選”勝負で業績好調の「業務スーパー」が抱える2つのジレンマ…ユニクロやニトリに類する神戸物産のビジネスモデル
神戸物産のビジネスモデルはユニクロやニトリと同じ?
神戸物産は2000年代に入ってから中小の食品メーカーの買収を繰り返すようになった。 この頃、中国が2001年にWTOに加盟し、急速に生産額を拡大していたタイミングで、安価な商品が大量に流通するようになった一方、安全性を疑問視する声が出始めていた時期で、それは2014年の鶏肉偽装問題で表面化することになる。 神戸物産は透明性の高い国内生産に切り替え、顧客の信頼を獲得しようとした。これが今のPBの拡大につながるのだ。 業務スーパーの現在のPB比率はおよそ35%、これを37%まで引き上げる計画を立てている。全国スーパーマーケット協会の調査では、一般的なスーパーのPB比率は10%程度だ。 PBの商品は、販促費などの余分なコストがかからないために粗利率が高い。 業務スーパーは一般的なスーパーマーケットよりも、ニトリホールディングスやユニクロのファーストリテイリングのモデルに近いと言える。 両社ともにスケールメリットを活かして安さという武器を手に顧客開拓を進め、製造も手掛けるようになった。 それはやがてSPA(製造小売業)という洗練されたビジネスモデルに行き着いた。
業務スーパーはなぜ出店スピードが落ちているのか?
しかし、神戸物産にも弱点がないわけではない。それは店舗を急拡大しづらいというものだ。 全国のスーパーマーケット数はおよそ2万3000。業務スーパーはわずか5%ほどであり、出店余地はあるように見えるが、2024年10月期における店舗純増数は36であり、2023年10月期の41からは勢いを失った。 2021年10月期から純増数は減少しており、2025年10月期も純増数は34となる見込みだ。 出店スピードを上げられない背景に、顧客の来店頻度を高めづらいことと、1店舗当たりの商圏が広いことがあるだろう。 市場調査などを行なうナビットは、業務スーパーに関する消費者調査を行なっている(「一般客も歓迎、業務用スーパーについて大調査【1000人アンケート】」)。 それによると、業務スーパーに毎日来店するとの回答はわずか0.1%。週4~5日、週2~3日を合わせても全体の4割ほどとなっている。 全国スーパーマーケット協会のスーパー利用動向調査によると、ほぼ毎日との回答は5.3%。週2~3日、週4~5日を合わせると7割近くなる(「消費者アンケートでみた スーパーマーケットと 他業態」)。 業務スーパーは冷凍食品やレトルト食品、調味料などの日持ちする商品の購入が中心となるため、来店頻度が低いのだ。 顧客の来店頻度を高めるためには生鮮食品を扱う必要があるが、それでは業務スーパーの強みが活かせなくなる。「商品点数」と「廃棄量」を増やすことになるからだ。 業務スーパーの競合にコストコがある。両社の特徴は、わざわざ足を向けさせる吸引力があるというものだ。ただし、顧客が日常的に通う場所ではない。 業務スーパーの顧客は目的を持って来店するため、通常のスーパーよりも商圏が広くなりやすい。 過剰な出店が顧客の奪い合いという、命取りにつながりやすいのだ。コストコの国内店舗数は36であり、数が多くないことがそれを物語っている。