豊洲市場 開場1年 「習熟期間」から新たなブランド確立なるか
10月11日に開場1周年を迎えた豊洲市場(東京都江東区)。紆余曲折を経てオープンした新たな「日本の台所」は、開場前から指摘されてきた駐車場不足の問題に加え、事前には予想できなかった新たな課題に直面している。一方で、築地とは違う閉鎖型施設のメリットを生かした適温管理・衛生管理のさらなる向上に取り組むなど、豊洲市場に適応しつつある事業者の姿もある。 【写真】「築地から豊洲へ」移転決定から17年 新市場がオープン
「閉鎖型施設」売場はガラス越しに見学
9月6日午前、見学者として豊洲市場に行ってみた。最寄り駅の一つである東京臨海新交通臨海線(ゆりかもめ)の市場前駅改札を出ると、正面に市場各棟につながるペデストリアンデッキがある。左手に青果棟(5街区)、左手の奥に水産卸売場棟(7街区)、そして右手の奥に水産仲卸売場棟(6街区)が見える。 ひとまず水産仲卸売場棟に向かった。この棟の3階は飲食店が立ち並ぶ人気ゾーンだ。9月とはいえ30度超えのまだ暑い最中だったが、回廊状に結ばれた通路から水産仲卸売場棟3階の館内に入ると、空調が効いていて涼しかった。旧築地市場は、店舗間に壁や仕切りがなく、商品が外気に触れやすい開放型の施設だったが、豊洲市場は閉鎖型の施設なので、商品を風雨から守り、1年中低温で商品管理ができるというのがセールスポイントだ。
旧築地市場では観光客も自由に売場内を歩けたが、豊洲市場では売場エリアに立ち入ることはできず、上階の見学者通路からガラス越しに1階の売場を見学する仕組みに変わった。水産仲卸売場棟の見学者通路から売場をのぞいてみた。仲卸各店が並ぶ通路を、長靴をはいた店の人や運搬車(ターレ)が行き交う姿が見えたが、音は当然聞こえず、潮の香りもしない。築地のような市場の喧騒から隔離されて少し寂しい部分もあるが、所狭しと動き回るターレに注意する必要もなく、安心して見学できる。 水産仲卸売場棟を出た後、せっかくだから全部の棟を見ようと思い、他の2棟にも足を運んだ。豊洲市場の敷地面積は、旧築地市場の約1.8倍。とにかく広く、見学を終えて帰る頃にはくたびれてしまった。買出人が魚介類や野菜を仕入れる際も、築地市場の時より買い出しに時間がかかるようになったのではないか。実際、ある水産仲卸業者は「築地の時は、お客さまとのんびりお茶を飲みながら話せていたのが、今ではお客さまは用が済むとすぐに移動されてしまう」とさみしげだった。