「強制的に『無』になっていただきます」ブリヂストンがウェルビーイング事業に本格参入 最新技術を生かして“無”になるサロン開業
背景には幸福研究の学問への注目が
「Live News α」では、哲学者で津田塾大学教授の萱野稔人(かやのとしひと)さんに話を聞いた。 堤礼実キャスター: ーー今回の試み、どうご覧になりますか? 津田塾大学・萱野稔人教授(政治哲学): 私にとって興味深いのは、ブリヂストンのような企業がこれまで培ってきた技術を使って、ウェルビーイング市場に本格参入しようとしている点です。これは現代の資本主義社会で生じている大きな1つの変化を表しているのではないでしょうか。 堤キャスター: ーーその変化とは、どういうことでしょうか? 津田塾大学・萱野稔人教授: 近年、学問の分野では幸福研究が注目されています。人間にとって幸福はどのようなメカニズムを持っているのかを探求する学問分野です。この幸福研究は英語で言うと、「ウェルビーイングスタディー」となります。 つまり人間にとってのウェルビーイングを探求しようという点で、企業の経済活動と学問が同時代的に歩みを共にしているんですね。
物質的な豊かさ以外での幸福へのアプローチが必要
堤キャスター: ーーそうした背景には、どんなことがあるのでしょうか? 津田塾大学・萱野稔人教授: なぜ、そうした現象が生じているのかという理由の1つが、幸福研究そのものによって示唆されています。お金は人間の幸福とどのような関係にあるのか、お金があれば人は幸せなのか。そうした問いに対して、多くの幸福研究が示しているのは、次のようなことです。 一定の金額までは所得が増えれば増えるほど人間の幸福度も上がっていくが、ある一定の所得額を超えると、所得と幸福度との相関関係が弱まっていくんですね。 これは、人間が幸福であるためにはある程度の豊かさが必要だが、その先の幸福のためには物質的な豊かさとは別の要因が重要になるということです。 堤キャスター: ーーどうしたら幸福になれるのかという、アプローチが問われているわけですね。 津田塾大学・萱野稔人教授: 企業はこれまで、さまざまな製品やサービスを提供することで社会の豊かさを高めてきました。そして、それによって人間の幸福度も高まってきました。 しかし今後は、物質的な豊かさにはとどまらない幸福へのアプローチが、ますます必要になってきますね。ブリヂストンの試みは、そんな時代の変化を映し出しているのではないでしょうか。 堤キャスター: 忙しい日々の中でつい忘れがちなのが、「無」になることかもしれません。 意識的に何も考えない時間を作ることで、得られることもあるように思います。 こういった時間も大切にしたいですね。
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