決選投票に進むためにカギとなる国会議員の支持動向はどうか。各陣営幹部や自民党関係者への取材を総合すると、小泉氏と小林氏がともに40～50人程度の議員票を固めて先行。林氏と茂木氏が30～40人程度、石破氏、高市氏、河野氏はいずれも30人程度の支持を固めていると見られる。 　現時点では、どの候補に投票するかギリギリまで見極めようという議員も少なくない。自民の閣僚経験者は「派閥解消で総裁選のやり方がガラリと変わった。今後大きな失言でもない限り石破さん、小泉さん、高市さんの3人が競り合う構図が続くはずだが、誰が決選投票に残り、最終的に勝つのかは読めない」と語る。 　中盤戦に入り三つどもえの展開が鮮明の総裁選。要因の1つが、告示前に「本命」との呼び声が高かった小泉氏の伸び悩みだ。 　自民党内では「政治とカネ」問題による政治不信の高まりを受け、次期衆院選への不安が渦巻く。2025年の都議選、参院選を控え、誰が新総裁になっても衆院解散・総選挙は早期に行われるとの見方が有力視される。 　こうした中、特に選挙基盤が脆弱な中堅・若手議員らから「刷新感」や改革姿勢を強くアピールできる新総裁を「選挙の顔」として選ぶべきだとの声が相次ぐ。そうした役割を担える筆頭格が小泉氏だと目されてきた。 　菅義偉前首相や中堅・若手議員らからの幅広い支持を背景に議員票固めで先行する小泉氏だが、世論調査の結果や党員・党友の支持でほかの候補を突き放すシナリオを描いていただけに、陣営のある議員は「誤算の展開だ」と漏らす。 ●解雇規制・夫婦別姓が焦点に 　伸び悩みの一因と指摘されるのが、小泉氏が公約に掲げた解雇規制の見直しと選択的夫婦別姓の導入だ。自民党内でも保守層を中心に慎重な意見が根強い。 　前者については野党などから「リストラを助長しかねない」などと批判が相次ぎ、その後の討論などで小泉氏は解雇の「自由化」や「金銭解決」については検討していないと釈明。リスキリング（学び直し）や再就職支援を条件に大企業の人員整理の要件を緩和することに1年で取り組みたいと主張している。 　これに対し、河野氏は「金銭補償を受けられるルールを明確化し、不当解雇を防ぎたい」と解雇規制の緩和に賛同するが、小林氏は「安易な緩和は働く人を不安にさせかねない」と懸念を表明。高市氏も「整理解雇は判例で要件が確立している。短い期間の議論で立法して覆すのは容易ではない」などと否定的だ。 　選択的夫婦別姓の導入を巡っては、小泉氏と河野氏は党議拘束をかけずに1年以内に国会に法案を提出する考えを表明し、石破氏も前向きだ。一方、「保守」を自認する小林氏や高市氏はともに導入に反対の立場だ。小泉氏や石破氏の主張に注目が集まるほど、安倍晋三元首相の後継をアピールし、要職を歴任した高市氏への保守層の支持が集まる構図になりつつある。 　さらに、首相に就任した場合の衆院解散・総選挙の時期についても、「できるだけ早期に解散する」との考えを繰り返す小泉氏に対し、ほかの候補者や野党からの反論や批判が強まっている。石破氏は「国会での議論なくして（判断材料が）十分だという話になるとはまったく思わない」と指摘する。 　看板政策の打ち出し方や論戦力にほころびが生じた小泉氏に対し、地方での底堅い人気と豊富な政治経験を誇る石破氏の陣営は地方票の獲得に自信をのぞかせる。 　だが、議員票の獲得では現時点で小泉氏が石破氏、高市氏を大きくリードしている。石破・高市の両陣営は地方票を積み上げ、「世論からの支持を得ている」とアピールして議員からの支持拡大につなげたい考えだ。 　派閥解消で議員や党員の投票行動は読み切れず、情勢はなお流動的だ。ほかの候補者陣営も経済・財政政策や外交・安全保障、地方活性化策などを訴えて支持の拡大を目指すとともに、決選投票をにらんだ連携も模索していく見通しだ。