中国軍が大規模演習 “台湾有事”に備え企業は…【The追跡】
中国軍は10月14日、台湾を取り囲む形で大規模な軍事演習を実施。中国側は、演習が「台湾独立への強力な抑止力だ」としています。中国が軍事的な圧力を強める中、台湾有事などを想定し、準備を進める企業などが増えています。その現場を取材しました。 14日に中国軍が台湾周辺で行った軍事演習。確認された中国軍艦は17隻、軍用機は延べ153機に上り、過去最大規模とみられています。 今回、中国軍は台湾を取り囲む形で6カ所の演習区域を設定。繰り返される中国による軍事的な圧力。この状況に、台湾の人は「テレビの報道を見て演習を知った。ミサイルがいつ上空を通過するかわからない」「中国による軍事演習は何度も経験しているのであまり反応しない。食料と水は確保するべき」と話します。
台北市内には、いざという時のための避難先の案内や近くの避難先を検索できるアプリなど、有事への備えが進んでいます。普段は駐車場として使われている場所も、有事の際は避難先になります。 地域の緊張が高まる中、企業も対策を迫られています。10月15日~18日まで、千葉市の幕張メッセで開催された国内最大級のデジタル技術の展示会「CEATEC2024」。台湾から出展している機械部品の設計や製造を手がける企業に聞いてみると、「自社独自のサーバーで、会社のデータを守っている」といい、中国からのサイバー攻撃を見据え、準備を進めているといいます。
有事を見据え、備えを進める日本企業もあります。サイバーセキュリティ関連の商品を扱う「ネットピース」です。指紋をパスワード代わりに使えるセキュリティソフトなどが主力商品で、台湾からの製品も輸入販売しています。 「台湾にスタッフがいる。非常に危機感を持っている」(「ネットピース」の古舘侑樹社長) 現在、台湾の支社には現地の従業員が2人いるネットピース。今後、有事が発生することも想定し、対策を進めています。都内のネットピースのオフィスを訪れると、台湾支社のスタッフと一緒にリモートでBCPの策定をしていました。 BCPとは、戦争や災害が起きた際に事業を続けるための計画を定めたものです。計画書には、「戦争などが発生した場合」という文字と、その対応が書かれています。台湾にいる社員の希望などを聞き取り、計画書を書き換えているところだといいます。 「有事の際は家族も一緒に連れてみんなで日本に来たいということで、逃げる経路をまず会社として確保する」(古舘社長) 現在台湾にある日本の企業の拠点数は約1500カ所。企業の多くがBCPの策定をしていて、大手商社の中には駐在員に1年間どの便にも使える航空券や、有事の際にもつながる衛星電話を支給している例もあります。 では具体的にどのような事態を想定しているのでしょうか? 企業のリスクコンサルティングを手がける専門家は次のように話します。 「武力侵攻は一番最後に起こるもの。グレーゾーンと呼んでいるさまざまな事態、経済制裁・輸出入制限・大規模なサイバー攻撃に伴うシステム障害なども考えている」(「東京海上 ディーアール」ビジネスリスク部の渡邉彩恵香さん) 特に大きな影響を与えるのが台湾周辺の海上封鎖です。台湾周辺の海域は、中東やヨーロッパなどから石油をはじめとする製品を日本に運ぶ重要な航路で、迂回の必要が生じれば、多くの企業の経営を直撃するといいます。 「台湾有事は台湾だけで起こるものではなく、日本に影響が及ぶもの。経営層に準備をしなければいけないと考えを持ってもらうことが必要」(渡邉さん)