「かつてはありふれた家庭の光景だった…」いま最もアクティブな直木賞作家と担当編集が想いを共にすること
『羽州ぼろ鳶組』シリーズ (第6回吉川英治文庫賞)、『じんかん』(第11回山田風太郎賞)、『塞王の楯』(第166回直木賞)など、数々の話題作を世に送り出し、いま最もアクティブで、ホットな歴史・時代小説家と言える今村翔吾さん。そんな今村さんの最新刊が『イクサガミ 人』です。『イクサガミ 天』、『イクサガミ 地』と続いたシリーズ待望の第3巻が刊行されました。 村上春樹が「日本の小説」を「決定的に変化させた」と言えるワケ 今回は中編『「やっぱり、作家ってすごい…!」担当編集が驚愕した…「”現役最強”の歴史・時代小説家の異能」』に続いて、『イクサガミ 人』の見どころを担当編集の竹内さんにお聞きしました!
もう一つの”デスゲーム”
――これまで誕生秘話と見どころを中心にお伺いしてきましたが、これだけ壮大な物語ですから苦労もあったかと思います。 やっぱり点数計算ですね。デス“ゲーム”ですから、ルールがあって『イクサガミ』では木札(点数)という重要な要素があります。所定の点数を持っていないとチェックポイントを通過できないわけですが、これがまぁ大変だった。292人もの参加者がいるから、「いまこの人は何点で、あの人は何点で…」などとExcelを何枚作ったか…。「私にとってはこれこそデスゲームだよ…」とくじけそうになったことも(笑)。 それに点数だけではなくて、東海道に沿って東京を目指すわけですから「誰がいまここまで来ていて、あの人はここで脱落した」と記録しているのですが、物語が進むにつれて主人公以外の視点も増えてきて、どんどん複雑になってくるんです(苦笑)。章の最後に、「残り、あと○○人」と生存者数を入れるので、章ごとに登場人物の生死表も作りました。 ――それは本当に大変ですね。たしかに読者としても「あれ、あの人どうなったっけ」と思うときがありました(笑)。 今村さんとは定期的にそれぞれ作っている点数表を見せ合って、違う数字になっている時は一緒に検算するのですが、だいたい今村さんが合っている(笑)。さらに今村さんが凄いのは、小説では描かれていない登場人物の行程も頭の中に存在していることです。「じつはあいつとあいつ、ここで一回戦っているんだよね」ということもありました。