ペットのX線検査を勧められたら…覚えておきたい「必要」と「不要」の線引き【ワンニャンのSOS】
【ワンニャンのSOS】#91 夜間診療で不要な検査をされる恐れがあることは前回、説明しました。では、いろいろな検査が必要なときはどんなケースか。今回は、おなじみのX線を掘り下げてみましょう。 【写真】吉田類が語る「酒と愛猫ララとの日々」(2021年) ヒトでもおなじみですが、動物でも一般的な診療で役立つのは骨折や脱臼など骨の異常です。この場合、痛みも激しいため、鎮静剤を必要とすることが少なくありません。 ですから、跳びはねたり、ぶつかったりしてケガをして違和感がみられるときは、X線検査が有効です。困るのが、内科的な原因が考えられるケースでしょう。 あるシニアのネコちゃんは副鼻腔炎で、口呼吸のクセがあるため、ガスを大量に吸い込んでいました。 それで鼻炎症状や咳などもあって、他院を受診したところ、X線や血液検査で異常ナシとなり、「MRI検査も」といわれて、当院に来られました。 若いネコちゃんならともかく、シニアでは胃腸の動きが低下します。そこにガスが吸い込まれると胃腸アトニーと呼ばれる症状を起こします。食欲不振や吐き気、嘔吐などは典型的な症状ですが「シニア」と「副鼻腔炎」という条件が重なると、X線をはじめとするフルコース検査をせずとも触診で十分把握できます。それで分かれば腹部の動きをよくする処置で対応できるはずで、多くの検査は必要ありません。 恐らく他院を受診された飼い主さんは、治療内容からネコ風邪として治療を受けたと思われますが、その診断だとしてもフルコース検査は理解できません。ガスの貯留を確認するだけで、それがなければ“MRI→腫瘍”という流れだったのでしょうか。 ■検査を除外できるケースも 消化器をはじめとする臓器の大きさや位置などを確認するには、おなじみのX線は効果的です。しかし、症状や年齢、生活スタイルから検査を除外できることも多く、やみくもに受け入れることはないでしょう。 最後に季節の変わり目によくみられる症状について。今年は異常気象でヒトもついていくのが大変ですが、気圧の乱高下によってめまいなどヒトのメニエール病のような症状を見せる動物は珍しくありません。 このような症状が突発的にみられたときのX線検査はアリです。ぶつけたりして頭部をケガすると、脳へのダメージで同様の症状がみられることがあります。そうすると脳の圧を下げるような治療が必要で、その確認にX線は役立つのです。 飼い主さんにとって目の前のワンちゃんやネコちゃんに異変が見つかれば心配ですが、おなじみのX線検査でも必要なケース、不要なケースがあることは大ざっぱに覚えておくとよいでしょう。 (カーター動物病院・片岡重明院長)