犯罪心理学者も厳選! 冷や汗がヤバい「シリアルキラー映画」6本
【3本目】迫真の恐怖と笑いの往復ビンタ ★桐生さん厳選!!!『殺人の追憶』(2003年) 【あらすじ】1986年、ソウル近郊の農村で若い女性の殺害事件が発生。その後も同様の事件が続き、地元警察の刑事とソウル市警の若手刑事が捜査に乗り出す。ふたりは衝突を繰り返しながらも有力な容疑者を見つけ出すが...... Blu-ray:4400円(税込) DVD:3520円(税込) 発売元・販売元:TCエンタテインメント 提供:ビターズ・エンド (C)2003 CJ E&M CORPORATION, ALL RIGHTS RESERVED 桐生 次は『殺人の追憶』です。本作の題材になった1980年代後半の韓国の事件と前後して、日本では佐賀女性7人連続殺人事件、東京・埼玉連続幼女誘拐殺人事件が起きました。アメリカから10~20年ぐらい遅れてアジア圏でも連続殺傷事件が起き始めた時代です。 本作は警察目線の映画ですが、当時の軍事政権下の韓国警察は、正直むちゃくちゃやってるわけですよ。人権も何もあったもんじゃない。「警察って怖いな」というところもあり、性的な目的で女性がモノとして扱われる事件そのものの恐ろしさもある。合間にクスッと笑わせるシーンもあるんだけど、それがないと正面切って見られない映画です。 私は殺人現場に何度も行っているからわかりますが、ポン・ジュノ監督は殺害方法や、特に被害を受けた女性の遺体の表現の仕方が迫真です。実際に現場を見たことがあるんじゃないかと思うくらいです。最初の被害者の顔をアリがバーッと這っているところとかね。 高橋 死体描写は非常に生々しいですよね。ゾッとする場面とおかしい場面の行ったり来たりが絶妙で飽きさせない。出る人出る人すぐに飛び蹴りをするところにもビックリしました。 自国でDNA鑑定ができないのでアメリカに頼まざるをえないというところも興味深かったし、都会の刑事と田舎の刑事の小競り合いも面白い。見当違いの捜査ばかりに終止した警察のもどかしさが余韻を残します。 桐生 DNA鑑定は80年代後半に日本でも導入されました。鑑定はすべてのDNAを読み込んでいるわけではなく、パターンが合っていれば一致と結論づけるものです。当時はまだまだ精度が粗く、死刑囚の再審請求などでも問題になったりしています。 本作ではアメリカでDNA鑑定をしてもらうんですが、当時の日本の鑑識や科学捜査も意外と進んでいて、例えばO・J・シンプソン事件(*1)の足跡の鑑定も日本が手伝っていたようです。DNA鑑定ができてから、犯罪捜査は物的証拠重視に一気にかじを切りました。韓国も民主化宣言後にどんどん取り入れたと思います。 (*1)1994年、元妻とその友人を殺害した疑いで著名なアメリカンフットボール選手のO・J・シンプソンが逮捕された事件。刑事裁判では無罪とされたが、民事裁判ではふたりの死亡について責任があると認定された