「トランプ政権復活」で、どうなるテック業界 日本含めた影響を予測する
米国大統領選挙は、ドナルド・トランプ氏の勝利で終わった。 なぜトランプ氏が勝利したのか、そこに至った背景などにはいろいろ分析の余地があるだろう。ただそこは、筆者は専門外なのでここで言及することはしない。 【画像を見る】次期アメリカ大統領になったトランプ氏 だが、今後のテック業界にどのような影響がありうるかを考察することは、ある程度まではできる。 筆者の視点から、「第二期トランプ政権がテック業界に与える影響」について、いくつかの観点から考えていきたい。
インフレ対策がテックに与える「さまざまな影響」
トランプ氏の政策の軸は「インフレ対策」だ。 民主党バイデン政権下でのインフレは米国市場を直撃し、収入が低い層ほど打撃を受けた。そのことに対する反対票がトランプ支持の背景にあった……とする分析がある。 分析が正しいかは別としても、結果としてトランプ氏はインフレ対策としての政策を軸に政権運営を行っていくことになる。具体的には減税であり、関税の引き上げであり、移民取り締まり強化だ。 テック業界への影響も、まずはこの3点から大きく影響を受ける。 円安容認であることは、直接的にわれわれの懐に響く。海外メーカーのものであろうが国内メーカーのものであろうが、円安は結局価格に反映される。この傾向が続くなら、あらゆるデジタル機器の国内価格は「高止まり」する。 関税の引き上げは、米国での他国製品の利用にブレーキをかける。自動車や家電など、日本製品も大きな影響を受けるだろうが、関税の主な標的は中国だ。シンプルに言えば、中国メーカーの米国でのビジネスはさらに厳しくなっていく。各種デジタルガジェットについても、米国市場と中国市場ではさらに様相が違ってくるだろう。中国メーカーは中国本土ではもちろん、「米国以外でどう立ち回るか」が大切になるのは間違いない。 それだけでなく、台湾からの輸入にも関税がかかることになれば、TSMCとの関係がフォーカスされることになるだろう。米国企業にとって強い逆風になりかねないため、さすがのトランプ氏も一定の慎重さを見せるだろうと希望的観測を持っているが、油断はできない。デジタルガジェットの生産からAI向けデータセンターへの投資まで、あらゆる側面に影響が出てくる。 対中政策については、さらに強固な対策をとってくると想定される。先端技術輸出規制は強化・徹底されるだろうし、日本をはじめとした同盟国への同調圧力も高まりそうだ。半導体製造機器や素材産業への影響が出る可能性は高い。 半導体という意味では、トランプ氏は補助金政策に批判的だ。 現在米国政府の支援によってTSMCやインテルが半導体工場を建設中だが、トランプ氏は「政府の支出からではなく関税によって政策を進めるべきだ」と主張している。 「米国国内に生産と雇用を」という意味で、半導体工場自体を米国に作ることはトランプ氏の方針にもかなうし、関税問題との関係も整理できる。だが費用の出元が変わるのなら、規模や速度感に変化が出てくる可能性は否めない。関税問題とセットで、半導体流通がどうなっていくかも注目しておく必要がある。 移民政策もテック業界に大きく影響する。 ビックテックの強さの一端は、世界中から優秀な人材を集められることにある。 ただ2017年からの第一次トランプ政権では、技術者向けのビザ発給要件が厳格化され、一時大きな問題となった。そのままコロナ禍に突入し、入国制限が始まったことで混乱はそのまま継続された。 バイデン政権下でもビザ発給数上限に大きな変化はなかったが、AI分野の技術者に対するビザ要件緩和が示され、さらに、手続きの合理化を進める方針が示されている。 トランプ氏は「高度な技術者は歓迎」としているものの、ビザ発給要件がバイデン政権と同じ「緩和方向」とは考えづらい。 このことは結果的に、米国国外にいる高度な人材が「米国以外を選ぶ」1つの理由になる可能性が高い。