BTSやBLACKPINK は韓服好きアピールで愛国心示す?K-POP世界席巻の陰で韓国が焦る伝統衰退、反日感情に飛び火も…
■ 韓服復興の動きが反日感情を刺激? キム・ダンハ氏が学んだ韓国宮中服飾研究院は、伝統をアレンジした衣装で日中韓によるファッションショーを何度も開催している。そこで学んだ人物であれば、国際融和の姿勢を継承しているに違いない。 ところが、である。戦没者を悼む顕忠日(メモリアルデー)の6月6日にインスタグラムを見ていたら、ダンハの公式アカウントに同社の服をまとった若い女性が竹島(韓国名、独島)を訪れている動画が投稿されていた。ダンハの顧客の1人が3年前に投稿したものに、「独島はぜひ一度行ってみたい島」とコメントをつけて再投稿したのだ。 韓国人が独島を訪ねるのは珍しくない。韓国人にとってこの島は、侵略者日本から守るべき国土の象徴となっている。そこを歩く動画のアップは、愛国心を示す立派な行為として、韓国では称賛される。しかもそれが顕忠日であれば、なおさらだ。だがその一方で、そうした行為は、反日感情を煽りかねない。 私はその動画でがっかりすると同時に、やはりこれが韓国なのだと再認識した。自分の行動が反日を扇動しかねないことに、あまりに無頓着な韓国人が少なくないのだ。 ダンハがターゲットとする韓国のMZ世代の間では、空前の日本ブームが起きている。そのため、若い世代では反日感情が盛り上がりにくく、さほど心配する必要はないという意見をこのところ見聞きするようになった。 だが、それはあまりにも早計だ。
■ 反日感情が社会全体を容易に飲み込む危うさ というのも、そのMZ世代でさえつい2年半ほど前までは、韓国を席巻していたノージャパンキャンペーン(日本不買運動)に同調していたのだから。 日本への対抗意識が社会として高まると、それに相反する個人的な感情はすっかり抑制されてしまう。それこそが、韓国社会の油断ならない側面だ。 若者が伝統を知らないという意識が広がれば、そんな若者に対して伝統を啓蒙しなければ、という動きが必ずや出てくる。その時、韓国文化が日本に根絶やしにされそうになったという歴史認識が、きっと語られるだろう。 節度のある議論がなされ、韓服復興の動きが反日と切り離されて文化やファッションとして盛り上がるのなら問題ない。韓服をベースにしたダンハのファッション性に注目している私としては、そうあってほしいと願う。だが、これまでもそうだったように、ちょっとしたきっかけに、反日感情に歯止めが効かなくなる懸念もある。 日韓関係はかつて、小渕恵三首相と金大中大統領により融和を見せたが、次の廬武鉉政権の日本に対する強硬な態度により、日本へのネガティブなイメージが定着した。当時の影響を大きく受けている世代が今の40~50代であり、世論調査でも日本の印象は常に悪い。 昨今の伝統を重んじようという機運の高まりが、反日感情を不必要に煽ることにならないか。韓国に住む日本人の一人としては心配でならない。 平井 敏晴(ひらい・としはる) 1969年、栃木県足利市生まれ。金沢大学理学部卒業後、東京都立大学大学院でドイツ文学を研究し、韓国に渡る。専門は、日韓を中心とする東アジアの文化精神史。漢陽女子大学助教授。
平井 敏晴