古代エジプトの「魔術師」が眠る墳墓を発見! 古王国時代の生活や文化の「新しい側面」も
エジプト考古省の発表によると、エジプト第6王朝時代の王族に医師・魔術師として使えた人物が埋葬されている「彫刻と美しい彩色が施された」墓が、フランスとスイスによる合同考古学調査団によって発見された。2022年に開始された調査を率いたのは、ジュネーブ大学のエジプト大学でエジプト学を研究するフィリップ・コロンベル。 【写真】2024年の考古学的大発見ベスト10 コロンベルのチームによって今回発見されたのは、マスタバ墳墓と呼ばれる種類の墓。「マスタバ」とはアラビア語で「ベンチ」を意味し、字義通り腰掛けのような形状が特徴だ。 独特な彫刻やドローイングで装飾されたこの墓には、鮮やかな色彩がほどこされた偽扉や、医師の名とさまざまな称号が刻まれた石棺が含まれており、ペピ2世が統治していた時代に生きた「ティティ・ナブ・フ」という名の医師が眠っているという。また、考古省のFacebook投稿によれば、石棺には「医療最高責任者」「司祭」「セルケトの魔術師」「最高歯科責任者」そして「薬草の長」といった称号が刻まれているといい、同省はこう説明している。 「過去に略奪された形跡があるにもかかわらず、墓の壁はそのまま残っており、古王国時代の日常生活や文化的な慣習を垣間見ることができます。調査チームはまた、医師の名前と称号が刻まれた石棺も発見しました」 考古学メディアのヘリテージ・デイリーによると、ティ・ナブ・フは非侵襲手術、接骨術、歯科治療、そして薬物治療などを行っており、地域の医療システムの構築に一役買っていた。 この墓跡を発見したエジプト考古最高評議会の書記長を務めるムハンマド・イスマイル・ハリードは声明で、古王国時代の重鎮が埋葬されているサッカラ遺跡南部に位置する地域の歴史に新たなページが加えられたと喜びを語っている。彼はまた、ティ・ナブ・フの墓からは、壁に描かれた文字や絵画から、エジプト古王国時代の日常生活や文化の新たな側面が明らかになったと説明している。 フランスとスイスの共同で行われたこの調査では、墓地の所有者の名前と称号が刻まれた石棺以外にも、花崗岩を模した赤い塗料が塗られた天井、家具や葬祭の供物を描いた彫刻が発掘された。
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