小中高の暴力行為、初の10万件超 7割は小学生「心の叫び」の声も
全国の小中学校と高校で、2023年度に確認された子どもの暴力行為が計10万8987件(前年度比14.2%増)に上った。文部科学省による調査で分かった。10万件を超えたのは初めて。 【画像】増える暴力行為 元教諭の教育学者「子どもたちの心の叫び」 調査は「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」。国公私立学校や各教育委員会を対象に毎年実施されており、結果が31日に公表された。 同省によると、同調査における暴力行為は、「教師の胸倉をつかんだ」「同じ学校の生徒同士がけんかとなり、双方が相手を殴った」「登下校中に通行人にけがを負わせた」「教室の窓ガラスを故意に割った」など、学校内外で「自校の児童生徒が故意に目に見える物理的な力を加える行為」を指す。 23年度分を校種別にみると、小学校7万9件(前年度比8554件増)、中学3万3617件(同3918件増)、高校5361件(同1089件増)。1千人あたりでみると、小学校11.5件(同1.6件増)、中学10.4件(同1.2件増)、高校1.7件(同0.4件増)。21年度以降、小学校が中学を上回っている。 内容別でみると、生徒間暴力8万460件、器物損壊1万4072件、対教師暴力1万3043件、対人暴力1412件だった。 加害児童生徒数は、小学校5万1720人、中学3万1874人、高校6094人。学年別では中1が1万4917人で最も多く、次いで中2の1万684人、小4の9120人などだった。 報告された暴力行為件数が増えた理由について、文科省は「いじめの認知に伴うものや、児童生徒に対する見取りの精緻(せいち)化によって把握が増えたことなどが考えられる」としている。 ■「子どもの負担増の影響も」 専門家の指摘 一方、白梅学園大学の増田修治教授(臨床教育学)は、特に小学校での暴力行為が増えた理由について、コロナ禍の休校の影響で学習が不足し、考えをうまく言葉で伝えられない子がいたり、近年の指導内容の増加で子どもの負担が増し、学習内容が十分定着していなかったりしているとして、影響があった可能性を指摘する。 「小学生の暴力行為は『何とかしてほしい』という心の叫びだ。過剰な負担を減らし、ゆっくりと成長する環境を保障しなければ、これからも減らないだろう」と話す。(本間ほのみ)
朝日新聞社