令和書籍の歴史教科書、視点工夫のコラム充実 教育勅語、慰安婦問題、原爆投下など
文部科学省の検定に初合格した令和書籍の中学歴史教科書。明治23年に発布され徳目を示した教育勅語や、先の大戦を巡る「慰安婦」問題、原子爆弾投下といったテーマを読み解くコラムが充実しており、他社版とは異なる視点で歴史を追う工夫が凝らされている。 教育勅語については、現代語訳の要約の掲載にとどまっている教科書が多い。令和書籍版では、「修身道徳の根本規範『教育勅語』」と題したコラムを設け、1ページ半にわたって紙幅を割いている。 「父母ニ孝ニ兄弟(けいてい)ニ友ニ夫婦相和シ…」などの原文を引用した上で、現代語に訳して解説。「先人たちがよき伝統を残してきたから今の日本があるといえる」と勅語の本質を読み解いている。 慰安婦問題については、「蒸し返された韓国の請求権」というコラムを掲載し、日本軍が朝鮮の女性を強制連行した事実はないと解説。「従軍記者や従軍看護婦のように『従軍』させ、戦場を連れまわした事実はありません」と記述し、「従軍慰安婦」という用語が誤解を招く恐れがあるとした政府見解を分かりやすく説明している。 先の大戦中に朝鮮人女性を軍命令で「狩り出した」とする吉田清治氏の虚言を「証言」として報じた朝日新聞にも言及し、事実無根の強制連行説が広まった経緯が読み取れるようになっている。 米国による原爆投下は本文の記述に加え、安倍晋三政権下の平成28年にオバマ米大統領(当時)の広島訪問が実現した意義を伝えるコラムを2ページ半にわたって設けた。被爆者とオバマ氏が抱擁する写真も掲載された。 後段のディスカッション(討議)を促す項目では「原爆投下は正しかったか」を議題として例示。「一つの落としどころを見つけることが目的」と説明し、対立ではなく融和的な対話によって歴史認識を前進させる取り組みを実践できるように編集されている。 ■異例の検定「未了」も無事合格 令和7年度から中学校で使われる教科書の検定は3月下旬に結果が公表されたが、令和書籍版の検定内容が事前に外部に漏れていた可能性があるとする通報があり、文部科学省が検定「未了」として結果を留保する異例の経過をたどった。 教科書会社が検定に申請していることやその内容などについて、情報を事前に外部に漏らした場合、不合格とすることが規則で定められている。外部の動きによって審査に影響が出ることを避け、静かな環境で検定を行うための措置だ。