発達障害の人が見ている世界は「白か黒」……取材で知った「周囲とのすれ違い」を引き起こす2つの「重大特性」
発達障害の人は「空気が読めない」「他に人に協力しようとしない」と批判されてしまうことがありますが、それはなぜでしょうか。累計20万部を突破した人気シリーズ著者の野波ツナさん(漫画家)が、専門家から取材してわかったその原因を2つ、実にわかりやすく教えてくれました。新刊『発達障害・グレーゾーンの あの人の行動が変わる言い方・接し方事典』から抜粋・編集してお届けします。 【写真】野波ツナ『あの人の行動が変わる言い方・接し方事典』
生活体験と取材を通じてわかったこと「内面を理解する大切さ」
こんにちは、漫画家の野波ツナです。発達障害がある夫・アキラさんと暮らしながら仕事をしていくなかで、私は発達障害の専門家に何度も取材する機会に恵まれました。また、講演会などに呼んでいただき、私と同じような境遇にある方々の話を聞く機会もありました。 そんな経験を積むなかで分かったことが1つあります。 アキラさんのように発達障害があったり、あるいは診断こそないけど発達障害の特性が見られるグレーゾーンの人(気になる「あの人」と呼びます)とうまく共生するためには、「あの人」の内面を理解することが欠かせない、ということです。 目の前の人がどんな気持ちか、そこをくみ取らないままコミュニケーションの技術をつかっても、なかなかうまくいかないと思うのです。 私の新刊『発達障害・グレーゾーンの あの人の行動が変わる言い方・接し方事典』では「あの人」に共通してみられる特徴を8つ取り上げましたが、今回はそのうち、最も周囲との「すれ違い」を引き起こしやすい2つを紹介します。
「あの人」の特徴……他者の立場にたつのが苦手
他者に鈍感な「あの人」はめずらしくありません。 イラストのように同行者が荷物を抱えて困っていても、視界に入っていないと、相手がどんな状態で、自分が何をすればいいかわかりません(見えていてもわからない、という場合すらあります)。 他の人が思っていることや、周囲から注がれる視線に対する「感度」もかなり低めです。他者の立場にたって考えたり、意図を推察するのが苦手なうえ、「他の人はどう思うだろう」と推測する意識も希薄なので、つい自分の価値観だけで行動しがちになります。 だから周囲から「空気が読めない」「気遣いがない」と批判されてしまうことが多くなるわけです。 立場に対する自覚が芽生えにくいという問題もあります。他者の視線に鈍感なので、自分が「夫として/妻として」、あるいは「社会人として」見られているという意識が持てず、ふさわしい振る舞いができないこともあります。