Web検索にも生成AIが浸透。コンテンツは誰のもの?
OpenAIが、ChatGPTにウェブ検索機能を付加したようなサービスとして、ChatGPT search(SearchGPT)の正式運用を開始するそうだ。 MicrosoftはCopilotとBing、GoogleはGeminiと既存検索といったように、生成AIサービスと検索サービスの両方を提供しているが、Open AIがSearchGPTをスタートしたことで生成AI御三家ともに生成と検索、両面からのサービスを提供することになる。 別の見方をすれば生成AIの雄が生成との統合というかたちで検索の市場に参入したと考えることもできる。
🌐 Introducing ChatGPT search 🌐 ChatGPT can now search the web in a much better way than before so you get fast, timely answers with links to relevant web sources.https://t.co/7yilNgqH9T pic.twitter.com/z8mJWS8J9c― OpenAI (@OpenAI) October 31, 2024 ■検索で現れるコンテンツは誰のもの 日常的に有効に活用されているかどうかは別として、またたくまに浸透し、パソコン作業に欠かせない存在になってきた生成AIサービスではあるが、生成だけではもの足りない部分を検索でカバーするのは悪くないアイディアだ。今までそれを人間がやってきた。 キーワードを入れてウェブを検索するという行為は、検索エンジンが四六時中全世界のインターネットをクローリングしてネタを更新しているからこそできることなのだが、それは、結果として人の褌で相撲を取るようなものでもあり、コンテンツそのものが検索エンジンのものではない。 特定ニュースサイトなどとの協業で、そこのニュースだけはくまなく毎日学習するような契約ができているなら別だが、エンドユーザーはそれだけでは納得しないだろう。それよりも検索結果なのに、それがあたかも生成されたものかのようにみえてしまってはまずい。 最近のGoogle検索の検索結果は「AIによる概要」として、これまでのような検索結果リストの前にハイライト的にリストの要約を提示するようになっている。そして、それらにはちゃんと引用元を開くためのリンクが明示され、Google以外のコンテンツプロバイダーによるコンテンツであることがはっきりとわかるようになっている。 似たようなものとして、Googleの検索結果の前には広告が表示され、そのあとに検索結果リストが続くこともある。広告に先に目がいってしまい、そこを開いて満足してしまうエンドユーザーも少なくないのだが、広告と検索結果が明確に区別されていることを知り、それを知った上で利用する限りは大きな損失はない。 ■動画配信サービスと似た生成AIのビジネスモデル そもそもGoogle検索やBing検索は無料で使えるし、Bingなどでは多様なコンテンツを無償で楽しむことができる。Yahoo!にしたって同様だ。こうしたサービスを支えているのは広告にほかならない。いってみれば民放各局の番組コンテンツを無料で楽しめるのはスポンサーの広告がコンテンツに割り込むかたちで挿入されているからで、それと同じだ。 その一方で、ここ数年で登場した生成AIサービスのビジネスモデルは、多くの場合サービス利用料金を設定し、そのコストの一部をユーザーに負担させるようになっている。もっともシンプルなものが無料で、支払う金額によって処理系が異なるなどの付加価値が得られる。 NetflixやU-NEXTといったサービス、また、YouTubeなどでは、毎月の利用料金を徴収し、コンテンツは見放題とするか、広告が入る料金は少し安い、あるいは無料といった差別化をしているが、こうした動画配信サービスのモデルと似ているといえなくもない。 生成AIのビジネスモデルに広告のロジックを入れるにはどうすればいいのか。各生成AIサービスでそれについて尋ねてみても、なんとなくボンヤリした回答でよくわからない。AIに質問してなんらかの反応が返ってくるときに「この先は広告コンテンツです」といった断り書きを表示するというのもなんだかなぁと思う。 ■企業や組織が生成AIを使いにくいワケ これは現在のWebコンテンツでも同様なのだが、広告は広告であることを明示しないとステルスマーケティングと見なされてしまう。 そういうコンテンツを作ってしまわないように、企業や組織は生成AIを使うことに臆病になる。タダより怖いものはないというわけだ。ステマになってしまったり、知らない間に第三者の知的所有権を侵すことになってしまったりするくらいだったらコストを負担するから、いっさいの広告、そして他人の知財はまぜてくれるなというシンプルな要求にたどりつく。 われわれ人間は、いろんなところで学びを得る。学びを配信するのは学校の教室で授業する教師だったり、図書館の蔵書だったり、テレビやラジオの番組、そしてインターネットを介して入ってくる各種コンテンツなどだ。 有料のもの無料のものを含め、その多くの情報元からなんらかの知的財産を分けてもらっているのに近い。それを吸収して知識をもった大人になるわけで、知識ゼロの赤ん坊が、何かを学んで成長するためには、別の誰かの知識が源泉となる。 生成AIの将来を形作るのは何なのか。今こそ、そのことをじっくりと考えなければならない。 ■ 著者 : 山田祥平 やまだしょうへい パソコン黎明期からフリーランスライターとしてスマートライフ関連の記事を各紙誌に寄稿。ハードウェア、ソフトウェア、インターネット、クラウドサービスからモバイル、オーディオ、ガジェットにいたるまで、スマートな暮らしを提案しつつ、新しい当たり前を追求し続けている。インプレス刊の「できるインターネット」、「できるOutlook」などの著者。
山田祥平