【毎日書評】『私がいたからこそ成功した』と豪語するダメ上司に送る鉄鋼王カーネギーのことば
仕事は“天下一武道会”ではない
著者はこのエピソードを、現代の“理不尽なリーダー”と紐づけて論じています。部下の成果を自分の手柄にしてしまったりするような人はなぜ、優秀なリーダーになることができないのかと。 考えてもみてほしいのだが、自画自賛で自分の成果を誇る人の言葉をそのまま信じる人が、どれだけいるだろう。むしろ言えば言うだけ胡散臭くなり、逆効果というのが多くの人の自然な感性だ。(21ページより) しかも仕事とは、ボクシングや空手などのような1対1の“天下一武道会”ではありません。優秀な複数の社員を気持ちよく働かせることのできるリーダーにこそ、本当の意味での価値があるのです。だからこそ著者は、「腕力自慢」で満足しているリーダーにはカーネギーの以下のことばを贈りたいのだそうです。 “Here lies a man who knew how to enlist in his service better than himself”(カーネギー・ホール公式サイト) “己より優秀な人間の協力を得る術を心得し者、ここに眠る” (22ページより) 自分よりも優秀な人材を仲間に持つことこそ、本当の経営者の誇りだということです。(20ページより) 「話は変わるが」を駆使して強引に話題を違う方向に持っていく手法がそうであるように、なかなかアクの強いアプローチが特徴的。しかし、それが不思議な魅力にもなっているので、どんどん引き込まれていくはず。読了したころには、組織やリーダー、メンバーについての重要なポイントが身についているかもしれません。 >>Kindle unlimited、2万冊以上が楽しめる読み放題を体験! 「毎日書評」をもっと読む>> 「毎日書評」をVoicyで聞く>> Source: 新潮新書
印南敦史